January 22 2008, No.328
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■
         *** http://scousehouse.net/ ***        


――――――――――――――――――――――――――――――
▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
―――――――――――――――――――――――――─ NLW □

「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
       〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第115号 /
    Liverpool 08 - European Capital of Culture開幕!〜 Part 2 ―
 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish115_photo.html ≫

先週に引き続き、リヴァプールの《European Capital of Culture》オー
プニング・ ウィークエンドについてお伝えします。

2日目となる1月12日(土)、Echo Arenaで行われた "Liverpool - The  
Musical: The Greatest Story Ever Told" 。
これは、<Regeneration(再生)>をテーマに、ローラーコースターのよう
なリヴァプールの繁栄とドン底を経験した歴史を、地元で採れた音楽と
ヴィジュアルで物語ったショーです。

Echoアリーナに入ると、リヴァプールFCの元選手で監督だったKenny
Dalglish、会場にはMike McCartneyが、前方にはKen Doddの姿も見ら
れました。

ステージ中央には<LIVERPOOL>と書かれた電光文字と<08>の貼紙
が。
その下で、建設現場の人たちが作業をしていると、頭文字の「L」の文
字がチカチカと消えかかっています!
観客はアクシデントなのか演出のうちなのか? と見守ります。
作業員がクレーンに乗り、電光掲示板に登って修理をします。
最初の「L」が直ったと思ったら同様に最後の「L」も。
掲示板の上を這って直しにいきます。
プラグを付け直すとボン! と煙が噴出し、その勢いで作業員が落ち
て、ベリベリッと剥がれた<08>の貼紙につかまってぶら下がってい
ます! 
ショーのスタートであることを確信して、観客は拍手を送ります。
「問題あり?」から始める自爆ネタもリヴァプールらしい演出です。

リヴァプールを夢見て "Liverpool is the pool of life" と言った、心理学
者カール・ユングの引用句から始まり、 スクリーンには真っ赤なプロ
ジェクションが。
そのトップにNo Faking DJsの3名がダンシーな<Rule Britannia>をプレ
イした後、Liverpool Philharmonic Orchestra(以下RLPO)が続きます。
イギリスの国章であるライオンとユニコーンが赤いカーテンを開きます。
指揮者Vasily Petrenkoがシザーリフトに乗り、縦に段々に組まれた足
場から演奏するオーケストラを指揮し、中世の戦士の格好をした女性
オペラ歌手が歌います。

奴隷貿易のシーンでは<Amazing Grace>、時はヴィクトリア朝時代、
ヴィクトリア女王が地球を丸呑みするかの勢いで世界各地を征服して
植民地化を進めていきます。<Land of Hope and Glory>は壮大で鳥肌も
のでした。

1930年代に入ると一転して第二次世界大戦のドイツ軍による爆撃を受
けて各地が破壊され、焼け野原になったリヴァプールの映像を背景に、
Echo & The Bunnymenの<Nothing Lasts Forever>。

戦後の50年代、リヴァプール−ニューヨーク間の旅客船の太平洋航海
が盛んになったシーンで、The Wombatsの<Moving To New York>。

60〜70年代に入り、女性ブルース・シンガーConnie Lushが登場し、
<I Put a Spell on You>をソウルフルに歌う傍らで、ロープを巧みに操る
空中パフォーマンスが。
No Faking DJsが再び現れ、<Come Together / A Day in The Life /  
Strawberry Fields Forever>のカット・アップ・ミックスに続いて、サイケ
デリック、音楽の繁栄、宇宙飛行などのバックドロップの前でGary
Christian+Sense of Sound合唱団+RLPOによる<Revolution>、そして
Beatlesオリジナルの音源+RLPO+Sense of Soundで<All You Need
Is Love>、途中<Green Sleeves>なども挿入されていました。

La'sの<There She Goes>をバックに、60年代後半〜70年代前半にスラ
ムの一掃と街の再建。

80年代のサッチャー政権による市の財政圧迫、貧富格差の拡大、高
い失業率、人種問題の末に勃発したトクステスの暴動、そしてサッカー
界ではヒルズボロの悲劇、John Lenonの暗殺。
Frankie Goes To Hollywoodの<Two Tribes>がバッチリはまっていて効
果的でした。そしてJohn Lennonの<Mind Games>のプロモビデオが流
れて少しグッときてしまいました。
最後には追悼の意味を込めて、《John Lennon 1940−1980》がスク
リーンに映し出されます。

トクステス出身のラッパーRiUvEnがヒップホップダンサーを従えて<This  
is how we do it in tha L.I.V.!>と現代のありのままのリヴァプールのイ
メージを表現します。
RiUvEnマイスペース: http://www.myspace.com/riuven

Shackが<Pull Together>を演奏し、バックの映像にはトラックスーツの
トレンドやサッカー・カルチャーがフィーチャーされます。

“エルヴィス・オブ・エグバース”ことPete Wylieが金色のフライングVを
持って登場し、RLPOとともに<Heart As Big As Liverpool>を熱唱。
ここでは、バイエニアル、ブルーコート、FACT、Jump Ship Rat、Picket 
など、現在のリヴァプールの文化の映像が集められて流れました。前
日の "The People's Opening" の様子も含まれています。
詩人イエィツの引用句 "All things fall and are rebuilt again" が写った
のも印象的です。
Pete Wylieは、「リンゴを大統領に!」と叫んでステージを去ります。

前日の "The People's Opening" で「宝物」のライトボックスを持って出
演したSt ChristopherとPleasant Street小学校の生徒が合唱団の歌
声とともに再び現れます。

Gary Christianが再び登場し、RLPOの伴奏で<Here Comes The Sun> 
を歌います。
数十年間低迷した末にようやく光を見たリヴァプールを象徴するようで
す。ここでは2008年のハイライトイベントをバックに流しながら、フレッ
シュさ、クリエイティヴィティー、ダイナミズムをアピール。
続いてThe FarmがPete WylieとRLPOとともに<All Together Now>。観
客は全員起立で大合唱でした。

Liverpool Culture Companyの副チェアマンPhil Redmondがステージに
上がり、開口一番 「やったね、俺たち」。そして、「今夜が始まりだ。こ
れから丸一年ある。より大きく、より良く、より深く、より広くなっていくだ
ろう!」と言うと、会場は拍手喝采。
このイベントのプロデューサーJohn WassellとJohn Drapeを紹介し、
Artistic DirectorのNigel JamiesonとJayne Caseyにスペシャル・サンク
スと拍手を送りました。

最後にRingo StarrとDave Stewartが登場。新曲<Liverpool 8>を演奏
した後、誰もが予想したとおり、The Beatlesの<With a Little Help  
From My Friends> 。

ここで終わるかと思いきや、パフォーマー全員がステージに上がり、ラ
ストにJohn Lennonの<Power To The People>が!
会場は完全に一体となり、投げテープが舞い、華やかなフィナーレなり
ました。

リヴァプールのCapital of Culture年が、「人々」のものであるという強
いマニフェストのようでもありました。一生に一度限りのエクスペリエン
ス、マジカルな夜でした。このショーそのものが、今後リヴァプールが
語り継ぐ、最高のストーリーとなると思います。

11日の "The People's Opening" も素晴らしかったですが、12日の
"Liverpool - The Musical" はより緻密にプログラムがなされていて、
要所要所ツボを押さえていた気がします。
初日はどちらかというとセレモニーで、二日目はショーといった感じで
しょうか。
イベントのクレジットに、追加写真提供で私と旦那の名前も刻まれてい
るのを発見して、思わぬ嬉しいボーナスでした。

この週末は、フロム・ビーの淡路和子さんとご一緒しました。この特別
な時間を共有できてとても楽しく過ごすことができました。
アリーナを後にした後は、「やっぱり地ビールCainsで乾杯でしょ?」と
いうことで、パブ<Doctor Duncan's>にてミニ打ち上げ。<Liverpool  
Lager>や<2008 Culture Beer>までありました! 

淡路さんの旅行記は、メールマガジンBEA-MAILで、オープニングイベ
ントの様子は、日経BP社『大人のロック!』でそれぞれレポートされる
そうですので、どうぞお見逃しなく!
フロム・ビー: http://homepage2.nifty.com/beatopia/
大人のロック!: http://ent.nikkeibp.co.jp/ent/rock/

Phil Redmondが言う通り、350以上のイベントやプログラムの詰まった
2008年のリヴァプールは今始まったばかりです。
― 文化に触れてみて、普段と違ったことをトライして、違った角度で
モノを考えてみよう ―
リヴァプール08: http://www.liverpool08.com

来週は、1月19日に行われた "The Number One Project"の模様をレ
ポートします!

ミナコ・ジャクソン♪

≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish115_photo.html ≫


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
無断での転載を禁じます。  Copyright(C) 2001-2007 Scouse House