May 12 2009, No.383
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ――――――――――――――――――――――――――――――――― NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン 〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜 ― 第155号 / Sound and Vision - This is Sculpture (Silent Disco?!) ― ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish155_photo.html ≫ こんにちは。 今年もブリティッシュ・アスパラガスの季節がやってきました。 先日ウィラルのClaremont Farmにて、旬のアスパラガスを産地買いをし、軽く 蒸したあと冷やして、サラダにしました。 クリスピーで甘みがあって最高に美味です。一年間、輸入物を買わずに待ってい た甲斐がありました。 シーズンが終わる前に、フォーンビー・アスパラガスも味わっておかければ! 英国気象庁から、この夏は例年より暖かく、なんと「バーベキュー・サマー」と なる確率が高く、時には30度を超すことも?! という予想が。 ただ過去2年間も予想では調子の良いことを言っていながら、夏が来ませんでし たので、手放しでは喜べなそうですが、3度目の正直だと信じたいところです。 ♪ ♪ ♪ 4月30日(木)。 まず、午前中にNational Conservation Centreで始まったばかりの写真展 <Sound and Vision>のスニーク・ヴューに行ってきました。 フォトグラファーFrancesco Mellinaによる1978-1982までのパンク・ニュー ウェーブ、ニューロマンティクス真っ只中のリヴァプールを捉えた未発表の写真 の数々です。 「イタリア人写真家」と聞いていましたが、スカウス訛りに微妙にイタリア語ア クセントが混じった独特の話しぶり。 それもそのはず、リヴァプールを愛してやまず、1970年中頃から現在まで居つい てしまった名誉スカウサーです。 Francescoは、イタリアはカラブリア出身、ティーンエイジャーの頃からイギリ スに関するもの全てに魅力を感じ、独学で英語を学んでいましたが、ビートルズ の音楽に出会ってしまったのが決め手で、「自分の居場所はリヴァプールに違い ない」と悟ったそうです。 16歳にヨーロッパ各地へ旅に出て、22歳でリヴァプールに落ち着きました。 リヴァプールに着いたその瞬間から、「ここだ!」と感じたそうです。 リヴァプールで音楽シーンが盛り上がっているということは知っていましたが、 Francesco自身は歌えるわけでも楽器が弾けるわけでもありません。 でも、そのシーンに関わるにはどうしたらいいかと考えたときに、カメラで何か できるかもしれないと思い、Liverpool Art School(現John Moores University) にてフォトグラフィー・コースに通い始めます。 カメラを片手にあちこちのクラブを撮ってまわっているうちに、「マシュー・ス トリートにあるEricsっていうクラブが面白いらしいよ」と耳にして行ってみた ら、その場のエネルギーに圧倒され、「これこそ僕の求めていた場所だ」と確信 します。 撮りためた写真をどうしたらいいかと考えていると、周りの知り合いから、「NME、 メロディーメイカー、スマッシュ・ヒッツみたいな音楽誌に送ったら?」と勧め られ、売り込みはじめてまもなく、Echo & The BunnymenやTeardrops Explode といったリヴァプールのバンドがブレイク。ロンドンのメディアから撮影の依頼 が舞い込んできます。 当時、リヴァプールの音楽シーンでFrancescoのような写真を撮っている人は誰 もいませんでしたので、まさにその時、その場所にいたことで、リヴァプールに おける「元祖ロック・フォトグラファー」としてのキャリアが本格的に始まりま す。 音楽雑誌に写真と氏名が掲載され、全国的にも名が知られ始め、Face誌の正式カ メラマンとして、VIP待遇を受けた時期もあったそうです。 そうしたFrancescoの業界との人脈の広さに目をつけたPete Burnsから「マネー ジャーになってほしい」と頼まれ、Dead or Aliveの前身バンドNightmares in Waxのマネージメントを担当し、シングルを数枚リリース。バンドのプラット フォームを築きます。しかし、ありがちなことですが、次第にバンドとマネージ メントの間で方向性の違い生じ、Francescoはマネージャーを辞退。その後は音 楽業界での活動からフェードアウトします。 それとともに、何千枚もの写真のネガは箱に入ったままお蔵入りとなりました。 25年経った後、Ericsに通っていた元常連からFrancescoに声がかかり、写真を 見せたところ、その膨大なコレクションに驚き、それがきっかけとなって National Museum Liverpoolのキューレーターを紹介されて、展覧会の開催へと 発展したそうです。 今回、National Conservation Centreで展示されている60枚の写真は、1978-82 の間に撮影されたものです。 当時のリヴァプールのバンドに加え、Roxy Music、Clash、Ramones、New Order、 The Smiths、そしてまだ前座レベルだったU2のBonoなども被写体になっていま す。 ライブハウスやクラブで楽しむファンたちの表情、そして独自のメークや手作り のファッションで着飾るクラバー達の姿が、生き生きと捉えられています。 70年代、80年代のリヴァプールは、経済的にどん底を経験していましたが、 Francescoはこの展覧会を通じて、暗い時代の傍らで、このようにエネルギーに 満ち溢れ、明るい社会的側面が存在していたことを表現したかったと語っていま した。 この写真展は、8月31日まで続きます。 "Sound and Vision: Music and Fashion" 展 <National Conservation Centre> Whitechapel, Liverpool, L1 6HZ 電話: 0151 478 4999 開館時間:10:00am - 5:00pm(毎日) 入場無料 http://www.liverpoolmuseums.org.uk/conservation/exhibitions/mellina/ ♪ ♪ ♪ Sound and Visionの後は、Tate Liverpoolでサイレント・ディスコ!? Tate Liverpool の1階と2階にて、近代の巨匠から若手のコンテンポラリー作 家の作品までを展示している《DLA Piper Series》。 以前は、時代やアート・ムーブメントごとにまとめた学術的なレイアウトでした が、今シリーズの<This is Sculpture>では、スペースごと大胆に変身しました! 3つのセクションに区切られ、アーティストMichael Craig-Martin、デザイナー Wayne Hemingwayと息子のJack、そしてシアター・カンパニーForced Entertainmentのアーティスティック・ダイレクターTim Etchellが選ばれ、 Tateのコレクションから作品をセレクトし、それぞれのスペースを演出していま す。 ファースト・フロアの"Sculpture: The Physical World"のセクションから。 キューレーターはコンセプチュアル・アーティストのMichael Craig-Martin。 ロンドンのゴールドスミス・カレッジで教鞭をとっていた時期に後に1990年代 のヤング・ブリティッシュ・アーティスツとなる作家たちに多大な影響を与えた ことでも知られています。 ヴィヴィッドなピンクと黄色とブルーに塗り分けられたスペースに、作品単体の もつテーマごとに配置されていて、様々な素材・既存の日用品・色・サイズ・並 列・レファレンスなどが交錯して、作品が観る人々にどのように視覚的かつ物理 的に語りかけるかを追求しています。 Marcel Duchampの'Fountain'のレプリカ、Pablo Picassoの彫刻'Cock'、Amedeo Modiglianiの'Head'、Salvador Daliの'Lobster Telephone'、Jeff Koons 'Three Ball Total Equilibrium Tank'などのほか、Sarah Lucas、Julian Opie、 草間弥生の作品なども展示されています。 また、Michael Craig-Martin 本人作、日用品のドローイングに埋もれた 'SCULPTURE'の大きな文字も印象的です。 階段を上がって2階の片側には、シアター畑のTim Etchellsのキューレーショ ンによる"Performing Sculpture"のセクション。 彫刻のもつパフォーマンス性がテーマで、作品自体がパフォーマンスを表現して いる彫刻から、アーティスト自身のパフォーマンスをもとにした作品、観る人々 にパフォーマンスを呼びかける作品などがまとめられています。 Jim Lambieの紫のラメが輝くターンテーブル'Ska's Not Dead'、Gilbert & George 'Happy'、Man Ray 'Indesctuctible Object'などの他、Jeppe Heinの 'Invisible Moving Wall'(本当に壁が動いてます!)などの他、床のあちこち に貼られた丸いシールがヒントとなるTim Etchells自身の作品'In Many Ways' など、気をつけてみていないと見過ごしてしまう、隠れたパフォーマンスもひそ んでいます。 向かいの部屋には、Wayne Hemingwayと息子のJackプロデュースによるセクショ ン"Sculpture Remixed"。 Wayne Hemingwayは、80年代にゼロの状態からファッションブランドRed Or Deadを立ち上げた仕掛け人。 現在はHemingway Designを設立し、ファッションからインテリア、住宅までア フォーダブルなデザインを提案しているデザイン・グルです。 入り口手前の壁に掛けられたワイアレスのヘッドフォンを拝借して、カーテンを くぐった先には、シックなディスコという、あっと驚くセッティング。 もちろんミラーボールもダンスフロアもばっちり設置されていて('Dance Here' とのメッセージつき)、ヘッドフォンからは、この展覧会のために特別にセレク トされたダンスチューンが聞こえ、観客は踊りながら作品を鑑賞できます。 ヘッドフォンをはずすと、静けさの中で人々が踊っている、というシュールな 「サイレント・ディスコ」。作品もそれぞれムードたっぷりにライトアップされ ていて、彫刻の表情までが不思議とリアルに見えてきます。 WayneとJack Hemingway親子ご本人たちからダンスフロアの上でお話を伺いまし た。 構想段階で、普通のギャラリースペースを改めて視察し、良いと思う点、好まし くない点を洗い出したそうです。その際に、Jackが開口一番「美術館にいると さー、よく退屈するんだよねー」と22歳の若い男の子らしい正直なコメントを 漏らしたそうです。 そこで、「ギャラリーをディスコにしちゃおうよ!」と冗談半分で言ってみた発 言が、「それ、いいんじゃない?」と話が進み、実現したといういきさつがあり ます。 美術館といえば、「喋っちゃダメ、触っちゃだめで窮屈」というイメージが強く、 それに加えて他のお客さんの年齢層も高く、「居心地が悪い」。 20代のJackだけでなく、40代後半のWayneでもギャラリーにいると自分が若く 感じることがあるそうです。 「それは、アートの将来にとって懸念すべきことではないでしょうか? クリエ イティヴィティーは人々の生活や経済のあらゆる面で大切な要素ですから、アー トには今後も繁栄してほしいと思っています。だからやはり、23歳の若者達の意 見に耳を傾けることは大切ですよ」 するとJackが、「僕まだ23じゃないよ」と突っ込みをいれ、Wayneが年齢を訂正 します。 続けて、「子供達は我々の未来ですからね、George Bensonが歌ってるみたい に(笑)」。とのコメントには少しウケました。 このセクションには、Edgar Degasの'Little Dancer Aged Fourteen'、Ron Mueckの'Ghost'、Antony Gormleyの'Three Ways: Mould, Hole and Passage'、 Gemaine Richierの'Shepherd of the Landes'、そしてJohn Davies の 'The Redeemers'などが展示されています。 この展覧会は、2010年4月まで続きます。入場無料なのも嬉しいです。 "DLP Piper Series: This is Sculpture" 展 < Tate Liverpool > 住所:Albert Dock, Liverpool L3 4BB 電話:0151 702 7400 Email:visiting.liverpool@tate.org.uk オープン:9月〜5月は月曜日休館(バンクホリデーは開館) 6月〜8月は無休です。 開館時間:10:00〜17:50 http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/thisissculpture/default.shtm ♪ ♪ ♪ 久々に今週の告知です。 5月16日(土)正午に、リヴァプール大聖堂の鐘「Great George」が、John Lennon の名曲"Imagine"を奏でます。 これは、マンチェスターのアーバン・フェスティヴァル《Futuresonic》の一環 で、正午の後にも12時半、1時に演奏が繰り返されます。 どんなふうに街中に響き渡るかが楽しみです! Futuresonic: http://www.futuresonic.com/evans 5月20日から23日まで、 シティ・センター・ミュージック・フェスティヴァ ル《Liverpool Sound City》が行われます。 バンドのラインアップやチケット購入はこちらから。 Liverpool Sound City: http://www.liverpoolsoundcity.co.uk 22日には、Liverpool Sound Cityの一環で、日本から4つのバンドが登場しま す。 出演バンド:80kidz, DE DE MOUSE, Riddim Saunter, Tucker 場所は、Chameleon(FACTの隣)。こちらは入場無料です。 詳細は、http://www.newmusicfromjapan.com/tour-dates/#lsc 5月23日と24日には、《HUB Festival》がWellington Dockで開催されます。 今年も、スケボー、BMX、グラフィティー、ブレイクダンス、ライブなど満載の アーバン・ユース・フェスティヴァルです。入場無料です。 HUB Festival: http://hubfestival.co.uk それではまた再来週。 ミナコ・ジャクソン♪ ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish155_photo.html ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2009 Scouse House |