August 18 2009, No.390
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  リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

 ― 第162号 / Mike Badger - Art on the Waterfront - Urban Beach! ―

 ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish162_photo.html ≫

こんにちは。
前回、8月は「ブロリー・サマー(傘必須の夏)」と発表がありましたが、まも
なくして天候が少し好転したリヴァプールです。
最高気温は20度前後で、朝夕は肌寒いですが、思いのほか晴れ間の多い、比較
的過ごしやすい2週間でした。後半はいかに?!

♪ ♪ ♪

今週は、まずはゴールドフィッシュ159号にて登場したMike Badger氏を改めて
ご紹介します。

元La'sの創始者であり、音楽マニアの間では伝説的な存在として知られるMike
Badgerさん。La's脱退後はバンドOnsetを結成、現在もソロやナッシュヴィル
のミュージシャンとのコラボレーションなど様々な音楽活動を続けています。
その傍ら、10年来インディー・レーベル<Viper Label>のオーナーとして、ご自
身の音楽、Tramp AttackやEdgar Jonesなどのリヴァプールのミュージシャン
やバンドのアルバム音源を発信したり、カルト・クラッシック的な隠れたリ
ヴァプール出身バンドの名曲や、20年代から50年代のアメリカのバンドやギ
ター音源などを集めたコンピレーション・アルバムのリリースを行っています。
Viper Label: http://www.the-viper-label.co.uk/

今回は、Mikeさんのアーティストとしての顔を中心にお伝えしたいと思います。

先日、リヴァプール郊外の閑静な住宅街に位置するMikeさんのご自宅兼アトリ
エ/スタジオにお邪魔しました。

訪問することになったきっかけは、6月にBluecoat Display Centreにて開催さ
れた《Junk Shop Revolution》という展覧会のオープニング。
このリサイクル素材を使ったグループ展に参加していたMikeさんと話しをする
機会がありました。

「あなたの手掛けたSpaceの《Tin Planet》のアルバムジャケット、すごく好き
なんですよー。限定版の缶パッケージのを持ってるんですよ。日本の実家に置い
てきてしまって残念ですが」
と伝えたら、
「おお、君は日本人か。実は先日、日本の音楽雑誌からインタビューの依頼が
あったんだ。『クッキーシーン』っていう雑誌知ってるかい? 4ページの結構
長いインタビューで、掲載誌が送られてきたんだけど、何て書いてあるか分から
ないから、もしよかったら訳してくれないか?」
という話になりました。英訳をしてあげたら大変喜んでくれて、ライブ・ツアー
が終わって落ち着いた頃にアトリエに遊びに来てください、と招待されたという
運びです。

アトリエ兼レコーディング・スタジオに入るとまず目に入ったのが、天井に飾ら
れた《TIN PLANET》のコラージュ。
文字はもちろんブリキ製です。思わず反応したら、リヴァプール出身バンドの
SpaceのリーダーTommy Scottが、当時リリース予定のセカンドアルバムのタイ
トル名に困っていたときにここを訪れ、このプレートを見た途端、ピンときて、
Tin Planetに決めたというエピソードを話してくれました。

Mikeさんは、アルバムのジャケット写真に写っているプラモデルならぬブリキ・
モデルを制作し、シングルAvenging Angelのプロモーション・ビデオでは、
Mikeさん作のブリキのエンジェルと車が大活躍しています!
Space 'Avenging Angel': http://www.youtube.com/watch?v=NaxipnPS96M

アトリエの内装そのものがアートで、ワクワクさせられるものがあります。
素材は主にファウンド・オブジェクト(廃棄物、路上や日常の中で拾ったもの)。
ゴミや顧みられることのなかった物も、Mikeさんに拾われるとラッキーです。
愛情と遊び心をこもった魔法の手にかかって息を吹き返します。

ロボット第一号。頭には、切れた真空管が使われています。

マスタード・パウダーの缶でできた、「イエロー・サブマリン」。同名の曲のオル
ゴールも搭載しています。

Viper Labelからリリースされているコンピレーション・アルバム《Hot Guitar》
のジャケ写のモデルとなったブリキの切り抜きコラージュ。

スピーカーの前に置かれた、黒オリーブの缶の上で楽しそうに演奏するバンド。

魚の缶詰のフタでできた魚。

真っ赤なダブルデッカーのバス。
もともとはビスケットの缶。色や柄がきれいなので無心に作っていたら、ふとし
た瞬間に、バスの屋根にトラファルガー広場やウェストミンスターなどロンドン
の観光地が描かれていて、バスのルートのようだと気づいたそうです。
「直感的に手にしたものから、結果として偶発性を感じるときに喜びを感じる」
と語っていました。

そして、膨大な数の絵画、ライブのチラシやポスターのデザインが引き出しから
出てくる出てくる。
ほとんどの作品には、日付が刻まれていて、80年代から現在までの日記を覗いて
いるようでした。
自画像、身近な人々のスケッチ、繰り返し描かれるSF、キリン、アメリカン・
インディアン、アフリカに加え、ツアー中に描いた双六ゲームなどなど。

よく、「本職はミュージシャンかアーティストか?」と訊ねられるそうですが、
本人としては、どちらという認識はないそうです。
創造性が時には音になって現れ、時には造形として現れる、それだけのこと。
アートや音楽に熱く「情熱を注ぐ」クリエイターが多い中、ごく自然に、淡々と
、呼吸をするように創作し続けているアーティストとして新鮮味を感じました。

過度な作為性を嫌い、独自の感性と溢れ出る創造性を、ありのまま、極力ナマの
勢いを活かし、自然に任せて形にする思想は、彼のアートだけでなく、音楽や生
き様にも現れている気がします。

反権威主義ではありませんが、メジャーに媚びて制約されたり歪められるのでは
なく、作りたい音を自由に作り続けるため、出したいものをリリースするために
自分でレーベルを立ち上げたのも自然な流れだったのでしょう。
そして、ひょっとしたら、「音楽」「アート」といったジャンル分けの垣根を隔て
る概念さえ窮屈だと思っているかもしれません。

Mike's StudioはMikeさんが創造性を自由に泳がせて、音楽とアートの間をスイ
スイと行き来させられる、理想のスペースなんだという印象を受けました。

Mike Badger: http://www.mikebadger.co.uk/

PS:Mikeさんのコラージュ作品<Re-cycled Liverpool>の画像が、後日ご本人か
ら送られてきました!

♪ ♪ ♪

前回の《Music on the Waterfront》に続いて、《Art on the Waterfront》が8
月14日から16日の週末にかけて行われました。
Tate Liverpoolにて開催中の特別展《Colour Chart: Reinventing Colour,
1950 to Today》からインスピレーションを得て企画されたものです。
Tate Liverpool: http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/colourchart/default.shtm

私は土曜日に出かけてきましたが、午後のアルバート・ドックでは、2人モリ
ス・ダンスや、カラフルで可笑しな格好をしたエンターテイナー達が行き行く
人々を驚かせ、楽しませ、子供達は参加型のワークショップやイベントで色を
満喫していました。

夜8時半からはピア・ヘッドにて《Art on the Waterfront》のハイライト・イ
ベントである《LuminoCity+》。
サンバ・ドラムではじまり、カラフルに光るサイクリスト達が走り回り、ここで
も様々なパフォーマーがあちこちに点在していました。

10時になると、Port of Liverpool Buildingをバックドロップにしたライト&
サウンド・ショーが繰り広げられました。
色とりどりのライト・プロジェクション、花火、そしてへリオスフィアという
バルーンで上空を飛びながら舞う空中アクロバティック・パフォーマンスは、そ
の美しさに息を呑むものがありました。

この模様を記録したビデオをYoutubeにアップしましたので、こちらもご覧くだ
さい。
http://www.youtube.com/ianart

欧州文化首都は終わりましたが、リヴァプールにおける文化活動が決して終わっ
ていないということを実感させられるイベントでした。

9月25、26日には、《Film on the Waterfront》が開催される予定で、こちらも
楽しみです。

♪ ♪ ♪

最後におまけです。Williamson Squareにビーチが!
これは、Liverpool Central Business Improvement Districtが中心になり、シ
ティーセンターのビジネス活性化を目的に企画された「アーバン・ビーチ」。
子供達は大はしゃぎ、大人達もデッキチェアでまったり。イギリスのビーチにつ
きもののロバや、変なライフ・ガードやストリート・パフォーマーも時々出現し
ます。
このビーチは、8月末までの毎日午前10時から午後5時まで。
Liverpool Central BID: http://www.citycentralbid.com/events/shwEventsCalendarDetail.asp?id=541

♪ ♪ ♪

【今週の告知】
「キャピタル・オブ・フリー・カルチャー」と宣言しているリヴァプールですが、
本当に沢山の無料イベントが開催されています。
そのハイライトとも言える《Mathew Street Festival》は、ヨーロッパ最大の
無料フェスティバルを誇ります。
今年は、8月30日(日)、8月31日(月)の2日間。市内6ヶ所の屋外ステー
ジでは、世界から集まるクオリティの高いトリビュートバンドに加え、China
Crisis、Christiansなどホンモノのバンドも登場。
Mathew Street Festival: http://www.mathewstreetfestival.org/

そして、昨年からスタートした《Mathew Street Fringe》。
こちらは、29日(土)から31(月)まで、現在進行形のリヴァプールにおける
音楽シーンを表現するインディー・バンド達をショーケースするサブ・フェス
ティバル。
市内各地のライブハウスにて開催されます。
Mathew Street Fringe: http://www.mathewstreetfestival.org/fringe/

次回は9月にお目にかかります。それでは!

ミナコ・ジャクソン♪

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