January 19 2010, No.402
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ――――――――――――――――――――――――――――――――― NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン 〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜 ― 第170号 / Happy 2010 from Liverpool ― ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish170_photo.html ≫ 新年明けましておめでとうございます。 本年もどうぞ、よろしくお願いいたします! 記録的な寒波と大雪に見舞われてスタートした2010年ですが、私はその頃赤道直 下のシンガポールで新年を迎え、イギリスの夏よりも暑い気候を満喫してきまし た。 今回もリヴァプール発着のKLMを利用したのですが、帰りは大変でした。 天候の影響でアムステルダムからのフライトがキャンセルとなり、結局バーミン ガムまで飛んで、そこから代替バスでリヴァプール・ジョン・レノン・エアポー トに到着。さらに駐車場に停めておいた車の雪かきをしてから帰宅、という長旅 でした。 私たちが帰った頃は、雪はちらちら舞う程度になっていましたが、路面は凍結し てツルツルでした。 1月も半ばに入ったここ数日は寒さも和らぎ、路面の氷もだいぶ解けて、摂氏5 度くらいでも温かさとありがたさを感じます。 話が年末に戻りますが、12月20日に、O2アカデミーにてDeaf Schoolのライブを 観にいきました。 前回は、ホープ・ストリートでのストリートライブでしたが、今回は曲目もフル ラインアップで、エネルギーの炸裂したステージを見せつけてくれました。 ただ、ホープストリートのときにステージで腰掛け、呼吸チューブをつけながら 歌っていたEric Shark(本名Sam Davis)の姿がなく、どうしているのかなあと 思っていたところ、先週、訃報がありました。非常に残念です。 葬儀はこの号が配信になる頃にリヴァプール市内で行われるとのことです。 ご冥福をお祈りします。 ♪ ♪ ♪ 今週はまず、年末にスタートしたイベントから。 12月18日から、マルチメディア・ギャラリーFACTでは、新しい展覧会《Space Invaders: Art and the Computer Game Environment》がスタートしました。 タイトルが示唆するとおり、アートとコンピューターゲーム環境について追求し ています。 メディアアーティストやゲームデザイナーたちが商業ベースに乗ったゲームを超 えたアーティスティックな作品、ゲームの中のバーチャルなスペースと、現実の スペースのあいだの曖昧な境目について問う作品、そして既存のゲーム環境から 一歩踏み出した新しいコンセプトの作品など様々です。 日本からは、メディアアーティストの勝本雄一朗さんが<Amagatana(雨刀)>を 引っ提げて参上しました。 どこでも見かける透明なビニール傘がチャンバラ映画に出てくるような凄い音を 出す、日本刀に変身。傘に取り付けられたスイッチを入れて傘を振ると、動きに よってシャキーン、カキーンと異なる音が鳴り、本格的です。 モニターにへばりついて遊ぶ既存のゲーム環境から離れ、また日常にありふれた ものをモチーフにしたゲーム作りを考えた末に誕生した作品だそうです。 また、若手中国人アーティストのCao Feiは、ゲームの登場人物に扮した「コス プレ」ティーンエイジャーたちが、中国は広州の街をさまよう実写版のビデオ作 品<COSPlayers>を披露。 ニュージーランド出身のアーティストJulian Oliverの<LevelHead>は、キューブ 型のコントローラーをころころと回転させながら、スクリーンに映し出される登 場人物を迷路のような部屋から出してあげるように導くという空間記憶ゲーム。 Riley Harmonによるインスタレーション<What It Is Without the Hand That Wields It>は、かなり生々しさがあります。 ゲームの中で誰かが殺されるたびに、血をみたてた赤い液体がチューブから漏れ だして壁に滴ります。バーチャルな世界で起こった出来事が、現実の世界でいか に残酷なことであるかを表現しています。 一方で、インディーズのゲーム開発会社thatgamecompanyがソニーのプレイステー ション3のために製作した<Flower>は、プレイヤーが風となって、空に舞う花び らを導くというものなのです。 ため息がでるほど美しいランドスケープが舞台となったアーティスティックで、 ポエティックなゲームです。 また、FACTのカフェでは、テーブルのひとつが大きなゲーム機のコントローラー に変身し、向かいの画面を見ながらテトリスに挑戦することもできます。 他にもギャラリーには斬新なゲームが満載で、ゲームで遊ぶだけでも純粋に楽し いこの展覧会です。 《Space Invaders: Art and the Computer Game Environment》展は、FACTにて 開催中。2010年2月21日まで続きます。 < FACT > 住所:88 Wood Street, Liverpool, L14DQ 電話: +44 (0)151 7074444 http://www.fact.co.uk/2009/space-invaders ♪ ♪ ♪ 12月26日ボクシング・デーも、またまたFACTへ。ギャラリーの上の階にある映画 館に行きました。 この日に全英封切となった《Nowhere Boy》を観るためです。 この映画は、ビートルズファンのあいだでは、すでに話題に上っていてご存知か と思いますが、これは異父妹のジュリア・ベアード原作の《Imagine This: Growing Up WIth My Brother John Lennon》をもとにした、ジョン・レノンの伝 記映画です。 脚本は、映画『コントロール』(ジョイ・ディヴィジョンのボーカリスト、イア ン・カーティスの半生を描いた映画)のマット・グリーンハルシュが手掛け、監 督は女性アーティストのサム・テイラー・ウッドが務めています。 初の長編監督作品にいきなりこの伝説的な大物をテーマを取り上げてやってのけ てしまうというのは相当の勇気が必要だったと思います。 戦後のリヴァプールという時代を背景に、育ての母である厳格なミミ伯母さんと、 自由奔放でジョンに音楽的な影響を与えミューズのような存在だった実母ジュリ アの間で、複雑な家族関係に振り回されながら、まさに「行き場のない少年」そ のものなティーンエイジ時代を生きたジョン・レノンを描いた映画です。 幼いころから、肉親や親類との数々の生き別れや死別に直面するということは、 容易なことではなかったと思います。少年時代のジョンは、ガンガン屈折しなが らも、怒り、寂しさやフラストレーションを音楽を通じて昇華させていったんで すね。 もちろん、リヴァプールでの撮影シーンも多数登場します。日本ではいつからの 封切となるのでしょうか? Nowhere Boy: http://www.nowhereboy.co.uk/ ♪ ♪ ♪ さて、今年に入って雪の影響で街全体がマヒ状態となった1月前半のリヴァプー ルですが、雪解けとともに少しずつ動き始めています。今年のハイライトを含め てリストアップしてみます。 2004年より、リヴァプール市では毎年テーマ年が定められてきました。今年2010 年のリヴァプールのテーマは、"Innovation, Health and Wellbeing(革新、健 康と福祉)"です。 リヴァプール市とNHS Primary Care Trustが中心となり、年間を通じて、身体と 心が健康で幸福に保たれるための催し物が市内各地で展開されるようです。 2月7日にはオープニングイベントが予定されています。 http://www.festivalofhealthandactivity.co.uk 現時点ではその後の詳細はまだ発表されていませんが、こちらの公式ホームペー ジに随時アップデートされていく模様です。 2010 Year of Health and Wellbeing: http://www.2010healthandwellbeing.org.uk 「健康と福祉」テーマ年にマッチしてか、今年はダンス・イベントが目立ちます。 特に、今年で18年目を迎える《Leap Festival》では、例年よりも長期間にわたっ て、あらゆるタイプのダンス・イベントが盛りだくさん。アマチュアからプロま で、子供からシニアまで、クラッシック〜ラテン〜コンテンポラリーまで、様々 です。 Leap 2010: http://www.leap2010.co.uk/ アートでは、新年に入り、"Liverpool and the Black Atlantic"という、異なる 文化と大陸のつながりを模索するといった共通テーマのもとで、様々な展覧会が 行われます。 Walker Art Galleryでは、ガイアナ系イギリス人の画家の個展《Aubrey Williams: Atlantic Fire》がついこないだ始まったばかりで、今月末にはTate Liverpoolにて《Afro Modern: Journeys through the Black Atlantic》が、 Bluecoatでは《Sonia Boyce: Like Love - Part Two》がスタートし、その後、 FACT、Metal、International Slavery Museumそしてリヴァプール大学などでも 開催される予定です。 そしてTate Liverpoolでは、春から夏にかけて大型展《Picasso: Peace and Freedom》が予定されています。今年のリヴァプールの目玉イベントといえます。 ピカソの平和運動家および政治活動家としての一面に注目して、世界各国から集 められた150点以上の作品が展示されます。 開催は2010年5月21日から8月30日まで。 http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/Picasso/default.shtm 今年の後半では、再びLiverpool Biennial(リヴァプール・バイエニアル)が 戻ってきます。 英国におけるコンテンポラリー・アート・フェスティバルとしては最大規模を誇 るバイエニアルの今年のテーマは"Touched"。 物理的に「触る」だけでなく、「感動する」といった意味を持つこの言葉からイ ンスピレーションを得て、どのような作品が生れるのでしょうか。 2010年9月18日から11月28日まで。 http://www.biennial.com/content/LiverpoolBiennial2008/International10Touched/Overview.aspx 昨年はQueen Mary 2などの大型船が寄港して話題になったクルーズ・ターミナル は、今年も賑わいを見せそうです。 中でも、Crown Princesは4度もリヴァプールにやってくる予定です。今年のク ルーズライナー・カレンダーはこちらから。 http://www.liverpool.gov.uk/Leisure_and_culture/Tourism_and_travel/cruise_liverpool/index/index.asp ♪ ♪ ♪ 今年は、60年に一度の庚寅ということですが、腰の重い丑年が去って、今年こそ は景気だけでなく世の中全体の雰囲気がガラッと変わって明るい方向に邁進して いく ような、そんな年になってほしいものです。 ちなみに、今年の旧正月は2月14日で、リヴァプールでの旧正月のパレードは2 月21日(日)に開催されます。 場所は例年どおり、チャイナタウン付近になります。 http://www.visitliverpool.com/site/whats-on/chinese-new-year-2010-p225681 それではまた再来週! ミナコ・ジャクソン♪ ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish170_photo.html ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2010 Scouse House |