June 14 2011, No.463
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ▽特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ――――――――――――――――――――――――――――――――― NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン 〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜 ― 第196号 / Paul Trevor & The Reds Gallery ― ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish196_photo.html ≫ こんにちは。 肌寒いながらも午後10時頃になってもまだまだ明るく、夏至までまだまだ日が 伸び続けるリヴァプールです。 今回は、先月からスタートした、写真を通じて過去のリヴァプールが蘇る展覧会 を二つほど紹介したいと思います。 一つ目は、ウォーカー美術館で5月13日から開始した《Like you've never been away Photographs by Paul Trevor》展。 これは、ロンドン出身の写真家ポール・トレヴァーが1975年に英国の貧困地域を 回って記録するプロジェクトに携わり、その一環でリヴァプールに6ヶ月滞在し ながら撮影した写真を集めた展覧会です。 1975年当時のリヴァプールの人々の暮らしぶりが垣間見られるだけでなく、自分 自身の子供時代と時期的に重なることもあり、非常に興味深く、じっくり見入っ てしまう展示でした。 1975年の日本は経済成長の真っ只中で、すでにかなり近代化していたと記憶して いますが、これらの写真を見る限り、当時のリヴァプールは戦後まもない時代か と錯覚するような風景です。 トクステスやエヴァートン地区が主にフィーチャーされています。中にはかろう じて現在の面影の残る地域もありますが、多くの場所で家が取り壊され、道路の 名前さえも現存しない場所もあります。 モチーフは家族や子供達に焦点が当てられており、ソックスに穴が空いていよう が、どろんこだろうが、団地の廊下だろうが空き地だろうが歩道だろうが、どこ でも遊び場に変身させて、飾り気なく、明るく活き活きとした元気いっぱいな子 供達の表情がとても印象的です。 大人たちの表情にも、高い失業率や貧困による厳しさなどは微塵も見られず、時 間の流れがゆったりとしていたからか、くつろいだ様子さえ見られます。 今や誰もが携帯付きのデジカメを持っていて、大人も子供も場所や時間を問わず にいつでも写真を撮ったり撮られたりすることに慣れているご時世ですが、当時 は地域の人たちがカメラマンに会うことはおろか、カメラ自体のある家庭もそれ ほどない時代。それにもかかわらず、被写体が抵抗することなく伸び伸びとした 様子や表情が捉えられているのは、写真家がコミュニティーに溶け込んでいくな かで築いた絆の表れでもあると思います。 訛りの異なる27歳の若い写真家が6ヶ月間に渡ってエヴァトン地区の高層団地 に拠点を置きながらそれができたのは、リヴァプールの人々がおおらかでフレン ドリーでユーモラスだったおかげだ、とポール・トレヴァー氏は語っています。 現在は、子供達を保護する目的から、子供の顔がはっきりと写った写真を保護者 の許可なしに撮影したり発表したりすることが難しい世の中となっています。 おそらくこのようなプロジェクトは容易にはできないのが現状です。リヴァプー ルの現代の子供達を捉える代わりに、ポール・トレヴァーが35年ぶりの2010年 8月にリヴァプールを再び訪れ、当時の写真に写っていた人々を探し出し、本人 や家族との再会を果たした様子を撮影したビデオが館内で上映されています。 題名となった<Like you've never been away>とは、再会した住民の一人の一人 でポールのことを覚えていた人が彼に投げかけた言葉だったそうです。 まるでポールが35年ぶりにこの場所へ訪れたとは思えないくらいの親しみが地 元住民たちとのあいだで蘇っていました。 また、本展覧会のメインの写真となった、壊れたフレームを掲げて顔を覗かせて いる少年なのですが、悲しいことに20代で命を落としてしまったそうです。 昨年の訪問の際に、ポールはこの少年のお兄さんと連絡がつき、話をしたところ、 こんな写真が存在することすら知らなかったと感慨深い様子でした。 ポール・トレヴァー氏は、今後35年ぶりに再会した人達の現在の生活ぶりを記 録するプロジェクトを立ち上げたいと願っているそうです。 《Like you've never been away Photographs by Paul Trevor》展は、現在開催 中のフォトグラフィー・フェスティヴァル《Look11》の一環として行われていま すが、フェスティヴァル終了後の9月25日まで続きます。 <Walker Art Gallery(ウォーカー美術館)> 住所: William Brown Street, Liverpool L3 8EL 電話: 0151 478 4199 開館時間:毎日 10am 〜 5pm ウォーカー美術館《Like you've never been away Photographs by Paul Trevor》展のページ: http://www.liverpoolmuseums.org.uk/walker/exhibitions/paultrevor/ ポール・トレヴァー公式ホームページ: http://www.paultrevor.com/ 写真は、Flickrからご覧になれます。 <Paul Trevor Liverpool 1975's Photostream> http://www.flickr.com/photos/liverpool1975/sets/72157624383733904/ Look11ホームページ: http://www.look2011.co.uk/ ♪ ♪ ♪ リヴァプールの最も歴史ある文化施設であるブルーコート(The Bluecoat)に、 <レッズ・ギャラリー(The Reds Gallery)>が5月14日にオープンしました。 どこのフットボールチームでもショップは経営しているとは思いますが、この種 の「ギャラリー」をオープンしたのは、リヴァプールFCが初めてとのことです。 ギャラリースペースの壁には展示物や映像モニターのみならず、ベンチも設置さ れており、中央の展示スペースは、ミニサイズのピッチをイメージした空間に なっています。 メインの入口はCollege Lane側ですが、ブルーコートの庭園からもギャラリー に連結しています。 既存のスペースを巧く使ったなあと感心したのが、庭園から階段を下って入場す る際、アンフィールドのプレイヤー・トンネルのように、階段の上には'This is Anfield'のサインが貼ってあります。 クラブの歴史を形成してきた歴代のマネージャー、選手、そして出来事などが写 真を通じて綴られます。 クラブ所蔵のあまりにも有名な写真から未公開のものまで、またアーティストや 写真家などによる画像も盛り込まれます。 向こう12ヶ月以上に渡って3ヶ月ごとに異なるテーマの企画展が展開される予 定で、シリーズ第一弾の本展覧会のテーマは、<The Famous LFC Boot Room>。 フットボールファンの方々にはあえて説明するまでもありませんが、LFCブート ルームは単なるブーツ置き場ではなく、ビル・シャンクリーが監督を務めた60 年代から90年代初頭までのあいだ、12フィートx12フィート(3.65mx3.65m) の「ブートルーム」がシンクタンクとなり、監督をはじめとしたコーチングス タッフが集まり、チームの作戦会議が繰り広げられる場となった場所です。 そこから生まれた戦略がチームを黄金時代へと導いたことから、伝説のブート ルームという訳です。地元フォトグラファーで30年来のレッズサポーターでも あるスティーヴ・ヘイルが当時のブートルームの様子を捉えた未公開写真や、 アートの巨匠のスタイルをイメージして制作したグラフィックが展示されていま す。 ギャラリーではこうした写真や作品および書籍やポストカードなどの販売も行っ ています。 この展覧会は8月11日まで続きます。入場無料。 次なる第二弾は、テーマは<We Never Walked Alone>が予定されています。 <The Reds Gallery at the Bluecoat> 住所:the Bluecoat, School Lane, Liverpool L1 3BX 開館時間:月−土 10am〜6pm 、日曜日 10:30am〜4:30pm ホームページ: http://www.liverpoolfc.tv/redsgallery ♪ ♪ ♪ 【今週の告知】 その1; 6月18日と19日の週末は、セフトンパークで毎年恒例の野外フリーミュージッ ク・フェスティヴァル《Africa Oye》が開催されます。 英国で最大規模を誇るアフリカン・ミュージックの祭典ですが、厳しい財政のな か、ヘッドライナーにレゲエの女王、マルシア・グリフィスを迎え、今年も無料 開催が実現となりました。 両日ともに12:30pmから9:30pmまで開催。 Africa Oye: http://www.africaoye.com その2; 6月24日からTate Liverpoolにて、今年の目玉となる20世紀の巨匠ルネ・マグ リットの大型展が開幕となります。 入場料はちょっと高めで、大人£11(割引対象となる方は£9)。10月16日まで 続きます。 Rene Magritte: The Pleasure Principle展 http://www.tate.org.uk/liverpool/exhibitions/renemagritte/default.shtm それではまた次回! ミナコ・ジャクソン♪ ≪ http://scousehouse.net/goldfish/goldfish196_photo.html ≫ ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2011 Scouse House |