August 8 2006, No.262
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     リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World   
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▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」
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「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン
          〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜

  ― 第58回 / 「スカウス・インターナショナル!」 ― 

こんにちは!
今週はいつものどよ〜んとした天気に戻り、上着や薄手のマフラーを
持ち歩き、ここは南半球かと思うような肌寒いリヴァプールです。

まずは、アルバート・ドックのお土産屋さんで買った、『 Scouse
International 』(2ポンド49ペンス) というスカウス=リバプール弁のミ
ニ会話集。
『 Lern Yerself Scouse 』という小冊子の4ヶ国語対訳版で、英語・フラ
ンス語・ドイツ語・日本語に訳されてます。
お下品な表現も多いので、旅先でフル活用はキビシイかもしれません
が、とにかくこの本は単なる慣用句のみならず、スカウス訛りの由来、
アクセントの特徴、アイルランド・ウェールズ・中国・アフリカ・宗教によ
る影響というようなこの方言の背景について書かれていて、興味深い
です。

またびっくりしたことに、Paddy Murphy として知られ、リヴァプールを
愛して帰化し、78歳でここで一生を終えた Kanso Yoshida (昭和天皇
の遠い親戚(秩父宮勢津子妃殿下のはとこ)についても触れられてい
ます。

なぜこれを買ったかというと、先週ウォーカー美術館で、この本の著者
である故 Fritz Spiegl 氏の奥様である、Ingrid さんに(写真)お会いす
ることがあったことがきっかけです。
Fritz Spiegl 氏作の楽器 'Loophonium'(ルーフォニウム)は、ウォー
カー美術館の今月の「アート・オブ・ザ・マンス」として展示されていま
す。

ウォーカー美術館のホームページ:
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/picture-of-month/displaypicture.asp?venue=2&id=298

Fritz Spiegl 氏は、ユダヤ系オーストリア人で、ヒトラー政権から逃げる
ために家族とともにイギリスに亡命。もともとアイディアマンで、ものづく
りが好きで、グラフィックデザイナーなどの仕事をしていましたが、ひょ
んなことからフルートに入れ込み、1948年には Royal Liverpool
Philharmonic Orchestra のプリンシパル・フルート奏者に選ばれるま
でになりました。
彼のウィットに富んだユーモラスな性格は、リヴァプールという土地に
しっくり合い、音楽的才能とモノづくりのセンスは、型破りで面白おかし
いことにも惜しみなくつぎ込まれたようです。

このルーフォニウムもそのひとつで、"loo (ルー=トイレ)" と
"euphonium" (=ユーフォニウムという金管楽器)をくっつけて、表面
にお花などを描いたものです。
これは単なるオブジェではなく、実際にリヴァプール・フィルのメンバー
と一緒に行ったエイプリル・フール・コンサートでも演奏されたそうだか
らすごいです!

Ingrid さんに、
「このトイレは新品だったのですか?」
ときいたら、
「心配しなくていいわよ、今は古びて見えるけど作った当時は新品だっ
たわ」
と笑ってました。

そのときに、Fritz さんが "Lern Yerself Scouse" などの著者で、
Scouse Press を設立したことを教えてくれました。
この出版社からは、リヴァプールに関するいろんな本が出ています。
サッカー用語の本、"A Game of Two Halves, Brian" も読んでみたい
です。

Scouse Press ホームページ: http://www.scousepress.co.uk 


さて、8月に入ったリヴァプールは、夏休みで学生が帰省していなくな
り、地元市民はホリデーシーズンで旅行に出かける人も多く、静かでイ
ベントも少なめでした。

金曜日。ボールド・ストリートの Microzine (マイクロジン)の新装オープ
ン・パーティー&新しい展覧会のオープニングがありました。1階の
ショップスペースに、ロドニー・ストリートにあるレストラン 'Puschuka'(プ
シュカ)とのコラボカフェ、'Micro Puschuka Cafe' がオープン。来客は、
ワインと中華料理のお持ち帰りボックスに入ったサラダでもてなされ、
すごい賑わいでした。
ファッション、家具、雑貨、アートに、Puschuka というリヴァプールの中
でも一目おかれるレストランがカフェ担当ですから強力ですよね。
カフェの営業時間はまだ決まってないそうですが、午前8時から午後6
時くらいまでオープンするみたいです。

2階のショップ&ギャラリースペースでは、James Cauty の "Stamps
of Mass Destruction" 展がスタート。
James Cauty はリヴァプール生まれで、私も大好きだった90年代のグ
ループ The Orb の初期メンバーであり、The KLF では Bill Drummond
とともに主要メンバーでもありました。
そして、K-Foundation として、"Watch the K Foundation Burn a
Million Quid" という、現金100万ポンドを燃やすというショッキングなド
キュメンタリー映画を作ったことでも知られています(また見たことない
んですけど)。

今回の展覧会は、CNPD (Cautese National Postal Disservice) 切手
のデザイン展。
もちろんイギリスで使える本物の切手ではなく、Cautese (多分本人の
苗字からとったんでしょう)という架空の国の切手です。
しかも "Service" ではなく、"Disservice" (危害を加える、ひどい仕打
ちをするという意味)というところがとってもパンクです。

コレクションのタイトルが「大量破壊」ということもあり、ガスマスクをつ
けた女王、爆撃に遭ったロンドンのビッグベン、燃えるアビーロードの
ビートルズ(これはこのリヴァプールでの展覧会用に制作したもの)な
ど、ぶっ飛んだ作品の数々でインパクトフルでした。
ちなみにこの日は、James Cauty 本人は都合がつかず、不在でした。
でも女王に安全ピンをつけたデザインの主である Jamie Reid (ゴール
ドフィッシュだよりでも何度か登場している、Sex Pistols などのジャケ
などを手がけたアーティストです)が来ていました。彼が Cauty の作品
をどう思ったかきいてみたかったです!

この展覧会は、8月28日まで続きます。
CNPDホームページ: http://www.cnpdonline.com

 < Microzine(マイクロジン)& Micro Puschka (マイクロプシュカ)>
  住所:65-67 Bold Street, Liverpool L1 4EZ
  電話: 0151 707 6561
  ショップ営業時間:月〜土/午前10時〜午後6時 
             日曜/午後0時〜5時
  ホームページ: http://microzine.co.uk 


土曜日は、"Brouhaha International Street Festival" のクライマックス
であるパレードがありました。
スタート地点がうちの近くだったので、お見送りだけしてきました。
今やロンドンの「ノッティングヒル・カーニヴァル」の動員数をも凌ぐ?! 
とも言われるこのパレード、去年よりもパワーアップしている様子がう
かがえました。とってもカラフルできれいでした。

Brouhaha ホームページ: http://www.brouhaha.uk.com 


【今週の Ye Cracke】

日曜日にようやく暖かくなったので、お腹をすかせて行ったら、入るな
りバーのお兄ちゃんに「今日も料理はないよ〜」と言われ、仕方なく退
散。でも月〜土の3時半からバーベキューはしてるらしいので、来週再
トライしようと思います。

それではまた!

ミナコ・ジャクソン♪


(この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュ
だより」ページに掲載しています。
http://scousehouse.net/goldfish/goldfish58_photo.htm )


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