October 17 2006, No.269 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ミナコ・ジャクソン 〜 Goldfish Liverpool Update / Minako Jackson 〜 ― 第65号 / 「John Peel Day 2006」 ― こんにちは。 今週は、10月12日(木)の John Peel Day (ジョン・ピール・デー)。 2004年にペルーでのホリデー中に65歳で亡くなった、BBC Radio One の伝説 DJ、ジョン・ピールのトリビュート・イベントがイギリス中そして世 界各国で行われました。 "I just wanted to hear something I haven't heard before (今まで聞 いたことのないものを聞きたかっただけさ)" 40年間、自分の耳と感性に忠実に、有名無名に関係なく、ジャンルに こだわらず本当に多くのバンドを紹介し、世に輩出してきたジョン・ピー ル。 The Undertones の "Teenage Kicks" はあまりにも有名なジョン・ピー ル・マジックのかかったサクセス・ストーリーですが、そのほかにも誰よ りも先にジョンの耳にとまり、彼がラジオで放送することでキャリアを切 り開いてきたバンドは数知れず。Joy Division 、The Smiths 、The Fall 、 New Order 、Jimi Hendrix 、The Clash 、The Sex Pistols 、Nirvana 、 Public Enemy 、Pulp 、PJ Harvey 、White Stripe 。。。 もちろんリヴァプールのバンドも例外ではありません。 Frankie goes to Hollywood 、Echo and the Bunnymen 、Pete Wylie and the Mighty Wah 、The Lotus Eaters 、Teardrop Explodes 、 Half Man/Half Biscuit 、Dead or Alive 、China Crisis 、The Farm 、 Ooberman 、The Ladytron などなど。 私のピール体験は、学生の頃、放送研究会のDJサークルに所属して、 授業をサボっては部室にこもって友達とレコードを聴いたり、都内のレ コード屋さんをくまなくチェックをしたりしていたときにはじまります。 Strange Fruit レーベルから出ている "The Peel Sessions" は、彼のラ ジオ番組のなかで収録された様々なバンドのライブ音源です。当時私 は日本にいて BBC Radio 1 のことは知らなかったので、いまひとつジョ ン・ピールという人物像はつかめていませんでしたが、98年にイギリス にきたとき週中後半の夜やることのないときはジョン・ピールの番組を 聞きながら、いつ新しくてグッとくる音源が飛び出すかワクワクしていた ものです。 ジャンルも、ニューウェーブ、パンク、レゲエ、ヒップホップ、エレクトロ ニカ、実験音楽系まで実に幅広くて、私も60歳のバアさんになっても新 しい音楽を掘り続けたい! と憧れていたものです。 そういえば、一度だけ肉眼で生ピールを見たことがあるのを思いだし ました、、、リヴァプール・ロイヤルコートで、The Pavement 、Stereo Lab 、Salako の豪華3本立てのライブがあったときにジョンがプレゼン ターとして登場して、私はステージ前でかじりついて、手を振ったら手を 振りかえしてくれました!(とかいって、私のうしろの人に振ってたのか もしれませんが。。。) ジョン・ピール・デーがイギリス全国ときいて、ロンドン中心なのかなあ、 と思っていましたが、結果的に私はこの日にリヴァプールにいて本当 によかった、と思ってます。 ジョン・ピールにとってリヴァプールは、スピリチュアルな故郷であった ようです。彼自身は川向こうのヘズウォール生まれ、育ちもウィラルで すし、リヴァプール・フットボール・クラブを愛し、子供達にも Alexandra Mary Anfield, William Robert Anfield, Thomas James Dalglish, Florence Victoria Shankly というような名づけをするほどの熱狂ぶりです。 何よりこの日サッカー会場である、リヴァプール・FC・アカデミーに行っ て嬉しかったのは、ジョン・ピールの奥様のシーラさんや、子供達がい たことです、、、というか、息子さんたちが中心となって結成されたチー ム、Ravencroft Stanley もトーナメントに参加していたくらいなので、リ ヴァプールがジョン・ピール・デーの中心であったことは間違いありませ ん! 前日は一日ひどい雨模様で、木曜日の天候がどうなるかとっても気が かりだったのですが、そんな心配はどこへやら、割と温暖で快い天気 に恵まれ、ジョンもこの日ここにいたんじゃないか、という錯覚におちい るような不思議な雰囲気でした。 観客席付近には、マイク・マッカートニー氏が、シーラさんと「アンフィー ルドの声」(「エクストラタイムは何分です!」のアナウンス の張本人です)である George Sephton さんを撮影している姿も見られ ました。 もう一枚の写真は、George Sephton と、今回のイベントのオーガナイ ザーの一人である The Picket の Phil Hayes のツーショットです。 もう一人のオーガナイザーは、バンド The Farm の Peter Hooton 。 The Farm といえば、"All Together Now" がユーロ2004のアンセムに なってましたね。試合前に念入りな作戦会議をしているようでした。 http://www.thefa.com/Euro2004/EnglandCamp/Alltogethernow/Postings/2004/06/PeterHooton_TheFarm.htm そして今回で第2回目の John Peel Memorial Trophy は誰の手へ?! 試合のスタイルは、6サイドトーナメントで、グループAとBに分かれてそ れぞれの勝者が準決勝に進みます。 リヴァプールの音楽業界から以下のチームのラインアップが参戦しま した。 The Farm 、The Friday Foundry 、Groundpig(リヴァプール出身バン ド)、Deltasonic 、Robot Records(レコードレーベル)、Cream 、 Medication(クラブ)、Elevator Recording Studios(レコーディングスタジ オ:昨年のジョン・ピール杯の勝者)、The Picket(ライブハウス)& Africa Oye(アフリカンフェスティバル)、The Dry Bar(若いバンドを支 援するプロモーター)、LIPA(言わずと知れたポールマッカートニー氏の 設立したパフォーミング・アーツ大学)、そして Ravencroft Stanley(ジョ ン・ピールとシーラの息子とその従兄弟のチーム)。 一試合10分なので、そうとう集中しないとあっという間に終わってしまい ます。 しかもAとBグループ交互に試合が行われたのですが、ほぼ間髪いれ ずにゲームの入れ替えがあるので、各チームとも一つ前の試合から 回復する間もなく次の試合で、時間が経つにつれてキツそうでした。 それぞれのチームとも本気モードで、いい勝負でしたが、やはりそれ でも、特に準決勝に進んだ Cream チーム、The Picket & Africa Oye チーム、The Farm チームは、気迫が違いました。 個人的には、Ravencroft Stanley チームも頑張ってほしかったですが、 やはりオジさんチームの貫禄にはまだまだ遠かったようです。。。 決勝は、リヴァプールのクラブカルチャーの立役者 Cream チーム 対 バンドカルチャーの縁の下の力持ち The Picket & フェスティバル オーガナイザー Africa Oye チームの対決。 ハーフタイムをはさんで前半10分、後半10分でしたが、各チームのサ ポーターのゲキも声高に響き、濃厚な試合で、20分以上に感じました。 最終スコアは、5−0で、Cream チームが優勝! 本当はその後の The Picket でのトリビュートライブ&トロフィーの授賞 式も見に行きたかったのですが、その夜は家でゆっくりすることにしま した。BBC Radio 1 でも、もちろんジョン・ピール特集を組んでましたの で、やっぱり正しいトリビュートはラジオを聞くことかなと思い、ジョンの 愛した The Undertones の Teenage Kicks や Joy Division の "Love Will Tear Us Apart" などを聞きながら、改めてこの偉大なDJがいたお かげで耳に届き、ライブを目にしたバンドがいくつあったんだろう、と思 い返していました。 また、音楽とサッカーカルチャーを結びつきも然り。 私はそんなにサッカーのことを熟知しているわけではありませんが、 UK音楽を追いかけていると、サッカー界とシンクロしている部分が多い ことに気づきます。音楽からサッカーに入っていった人も多いのではな いでしょうか。 サッカーのイングランド公式応援歌がリリースされれば、即ナンバー1 入りしますし、89年に起きたヒルズボロの悲劇などは、97年のアン フィールドで行われたチャリティーコンサートを収録したアルバム "You'll Never Walk Alone - The Hillsborough Justice Concert" を通じ て知りました。そしてジョン・ピール氏もこのコンサートにプレゼンターと して登場しています。アルバム最後の2曲は、泣けます。必聴です。そ の場に居たかった。。。 ジョン・ピールほど音楽シーンに影響力をもたらしたDJ は今後出てこ ないかもしれません。今はラジオだけでなくいろんなメディアが溢れる 時代です。それでも、どういうかたちであれ、彼の意思を継いで多くの 新しい才能が日の目をみるようなチャンスを与えてくれる人々が居続 けてほしいものです。 John Peel Day 情報は、BBC Radio 1 の公式ホームページから。 http://www.bbc.co.uk/radio1/johnpeel/johnpeelday/2006/ 今週の告知は、音楽ネタにちなんで、第4回 Liverpool Music Week (LMW)。 今年は去年よりちょっと早めで11月4日から13日まで。メイン会場を Bumper (バンパー:Hardman Street)に移して行われます。 Bumper のほかにも、Barfly 、Korova 、Zanzibar 、Metropolitan といっ たライブハウスやフィルハーモニック・ホール、Carling Academy やリ ヴァプール大学なども巻きこんで大小のギグを展開。 11月4日は、クレイトンスクエアの BBC ビッグスクリーンで、Super Numeri 、Philip Jeck 、Tom Q(Hive Collective) が写しだされ、Carling Academy では、Shack のライブでキックオフです。 Liverpool Music Week 詳細は、公式ホームページとMy Spaceから。。。 http://www.liverpoolmusicweek.co.uk http://www.myspace.com/liverpoolmusicweek ついでに 11月4日にはLMW とは別に、Liverpool Academy で、ショー ン・レノンのライブもあるので困りました。。。しかもリヴァプール・バイエ ニアルの最中でその辺でもなにかあるかもしれないし。。。とにかく文 化的に元気な11月となりそうです。 それではまた来週! ミナコ・ジャクソン♪ (この連載に関連する写真は、ウェブサイトの「 NLW ゴールドフィッシュ だより」ページに掲載しています。 http://scousehouse.net/goldfish/goldfish65_photo.htm ) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2006 Scouse House |