October 11 2005, No.220
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NLW ■ *** http://scousehouse.net/ *** □■ INDEX ■□ ▽フロム・エディター ▼リヴァプール・ニュース <2005年10月5日〜10月7日> ▽寄稿:「 Football の旅」 ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ▽「利物浦日記(2005年夏)」 ▼スカウスハウス・ニュース ▽今週のフォト ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽フロム・エディター ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 僕の友人のアーティスト、魚部資子さんが、今月末から銀座で個展を 開きます。 2年ぶりの個展です。好評だった前回2003年の個展も、この欄で告 知したので、憶えている方もいらっしゃるかもしれませんね。 今回の個展では、この2年間に描きあげた10のアクリル・ペインティ ング作品を展示するそうです。 資子さんの作品を観るたびに僕は、「いったいこの人の頭の中はどう なってるんだろう」と不思議な気持ちになってしまいます。 数え切れないほどのイメージというかモチーフが、一枚の絵にぎっしり と詰め込まれているんですから。 しかもそれが、てんでばらばらではなく、するすると流れ出るように、あ ふれ出すように配置されているのです。 ユニークな色彩で、まるで歌を歌うように、ストーリーを語るように。 僕はたぶん行けないと思いますが(ものすごく残念…)、お近くの方は、 ぜひ足を運んで、ゆっくりとご覧になってみてください。たぶん、1枚の 絵で30分は楽しめると思いますよ! もちろん会場では、資子さん本人に会うこともできます。作品の話をい ろいろと聞かせてくれるはずです。でも、ビートルズやジョン・レノンの 話題にはご注意を。資子さんは筋金入りのジョン・レノン・ファンなんで す。語りだしたら止まらない…どころか、暴走してしまうかもしれませ ん…!? < 魚部資子 個展 インフォメーション > UOBE MOTOKO EXHIBITION 期間:2005年10月31日(月)〜11月5日(土) 11:30−19:00(最終日は16:00迄) 会場:銀座 小野画廊2 〒104-0061 東京都中央区銀座1−9−8 奥野ビルB1 (地下鉄有楽町線銀座一丁目駅10番出口) TEL; 03 3535 1185(事務所) TEL; 03 3535 1187(会場) 作品ウェブページ:http://hermitageu.plala.jp/ ― Kaz (11/10/2005) ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼リヴァプール・ニュース <2005年10月5日〜10月7日> ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** 10月5日(水) ******************************* 【プレミアシップ 05−06】 イングランド・プレミアリーグの結果です。 2日、ホームにチェルシーを迎えたリヴァプールは、1−4(前半: 1−2)と、痛い黒星を喫しました。 ゴール・スコアラーは、スティーヴン・ジェラード(36分)でした。 いまだ全勝でリーグ首位を独走するチェルシーは、これで2位チャー ルトン、3位トテナムとの差を9ポイント、4位マンチェスター・ユナイ テッドとの差を10ポイントとしています。 試合終了後、チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督はこう語りました。 「これで8試合やって8勝、18ゴールだ。そろそろうちの選手たちやう ちのチーム、それからチェルシー・フットボール・クラブに、敬意を払っ てくれてもいい頃だと私は思うがね」 「6ポイント、いや7だったか、8だったかな? どちにしろ少々のミステ イクは許される差ではあるね。寝ているわけにはいかないにしても。よ そのチームはうちを何とかして引きずりおろそうと必死で立ち向かって くるだろうから」 「我々は完璧なチームではない。世界一のチームだと言うつもりはな いよ」 「私はただ、すごくいいフットボール・チームだと言いたいだけだ。フッ トボール・チームに必要なすべてを兼ね備えたね。大きな目標、ディ フェンスのクォリティ、オフェンスのクォリティ、個々のプレイヤーのクリ エイティヴィティ、そういったものだ」 リヴァプールの監督ラファエル・ベニテスはこう話しています。 「彼(モウリーニョ)はよそのチームのことをたくさんご存知のようだね。 では私は自分のチームについて話そう」 「我々は確かにまだまだな面がある。しかし結果示すものよりはずっと いい戦いをしていたと思う」 「最初の25分間は非常に良かった。前半に限っても、リヴァプールの いいところを出せていたと思う。彼らと同じレヴェルで戦えていたから ね。しかしリードを許してしまったら、リスクを賭けて攻めなければなら ないものだ。そういう時に、また次のゴールを奪われてしまう。そういう パターンだったね」 依然7ポイントのリヴァプールのリーグ順位は、13位(2試合未消化 のため暫定)です。 エヴァトンは同じく2日、マンチェスター・シティとアウェイで対戦しまし た。 結果は2−0(前半:0−0)での敗戦。これで今季の成績は1勝6敗。 1試合未消化のため暫定ですが、リーグ最下位です。 *** 10月6日(木) ******************************* 【新生ストロベリー・フィールド】 4ヶ月前に孤児院としての役目を終え、行く末が心配されていた「スト ロベリー・フィールド」が、宗教施設として生まれ変わりました。 孤児院を運営していた救世軍は、「ストロベリー・フィールド」を修道院 タイプの施設「ボイラー・ルーム」として活用することに決めたのです。 そしてすでに、10月2日にオープンしました。 「ボイラー・ルーム」は、救世軍が立ち上げたプロジェクトで、現在ロン ドンとカルガリーに施設があります。今後、アメリカやヨーロッパにも施 設のオープンが予定されています。 「ストロベリー・フィールド」孤児院の建物は改修され、8つの礼拝室や、 多目的のミーティング・ルーム、メディテーション・ルームなどが作られ ました。 これらの部屋は、地域のコミュニティに解放されています。24時間い つでも礼拝に参加することができるほか、集会所や展示場として使っ たりすることができます。 また、アート・スタジオも作られていて、地域の画家や彫刻家、ミュージ シャン、演劇家たちの利用も歓迎されます。 ただし、今回の修道院施設への転用が、ビートルズの歌のように 「フォーエヴァー」なものになると決まったわけではありません。 救世軍は、「ストロベリー・フィールド」を売却するという選択肢を捨てた わけではないからです。 「ボイラー・ルーム」に妻と一緒に赴任したギャリー・レイシーは、10月 2日夜にこう話しています。 「これが最終決定というわけではありません。神がそうお望みなら、私 たちはここに留まることになるでしょう。お望みでないなら、クローズす ることになります」 「祈ることはエキサイティングなことです。祈ることは大切なことであり、 パワフルなことです。私どもは人々に、そのことを理解してもらいたい のです」 *** 10月7日(金) ******************************* 【5000枚!】 10月2日、ウィラル半島の西岸、ウエスト・カーヴィーのプロムナード に、5000枚のブラジャーが舞いました。 これは、乳がんの啓発のために、チャリティ団体「ブレークスルー・ブレ スト・キャンサー」のウィラル支部が企画したイヴェントです。 40人のヴォランティア・チームが2時間がかりで5000枚のブラをつ なげ、はためかせました。 チェアマンのジェーン・ボウルトンはこう話しています。 「ファンタスティックな反響だったわ。お天気も最高に味方してくれたし。 びっくりした人もちょっとはいたみたいだけど、みなさんがポジティヴに 受け止めてくれてよかったわ。たくさんの人が募金をしてくれたのよ。 今日は募金が趣旨ではなかったんだけどね。でも今後のチャリティで も使えそうかなって思います」 この日使われた5000枚のブラは、イヴェント終了後にパッキングさ れ、地中海のキプロスへ送られることになっています。 キプロスでは、来年4月に、英国の女性たちが世界記録にチャレンジ することになっているのです。 現在の「ブラつなげ」世界記録は、シンガポールのチームが樹立した 7万9000枚だそうです。 そういえばビートルズはかつて、「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ、人生は ブラの上を流れて行くんだよ」と歌ったものです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽寄稿:「 Football の旅」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「 Football の旅」 / 下村 えり(Eri Shimomura) 〜Vol.2 Premiership Match Review <Liverpool VS Chelsea> 今シーズン始まって未だホームでは負け知らずのリバプールだった が、そこにも終止符が打たれてしまった。 なんとチェルシーの Lampard(27分)、Duff(43分)、Cole(63分)、 Geremi(82分)から4失点! 結果、1−4での完敗に終わった。 大敗にはなってしまったが、リバプールは、PKを取られた以外はまず まずのパフォーマンスで、最初から最後まで一貫して攻め続け、諦め る事はしなかった。 特に前半20分は、ベニテス監督も素晴らしいと讃えるほどのパフォー マンスだった。 しかし、25分、Traore のゴール前右でのスライディングアタック失敗で 試合の流れが大きく変わった。 これによりチェルシーにPKを取られてしまい、ゴール右隅に蹴られた Lampard のキックは、キーパーの防御をわずかに逃れてラッキーにも ネットに収まってしまう。 先制ゴールを取られたリバプールは35分、左コーナーキック Riise か らつないだボールを、Gerrard が素晴らしいシュートでゴールを決め、 1−1に追いつく。 がしかし、43分、リバプール Hyypia のディフェンスをかわしたチェル シー Drogba が、見事なパスをゴール前へ。それに Duff が上手く合わ せてゴール、チェルシーの2点目が入る。 続いて又チェルシー63分、リバプールのディフェンスを超え、ボールが チェルシー Drogba から Joe Cole へ渡りゴールとなる。チェルシー3 点目。しかしこれはどう見てもオフサイド! 今回は幸運がチェルシー の味方だったか。 その後リバプールも反撃にかかり、中盤からハイボールが何度も前 線の Crouch 目掛けて入って行くのだが、上手く繋がらない。 70分には Riise がハーフウェイから鋭いシュートを放つが、ややゴー ルを外れる。 続き72分、Crouch に見事なボールが渡るが、どうしてもスコアする事 が出来ない。 そして駄目押しの4点目が82分、チェルシー左からの攻め。Drogba か ら Robben 、そして Geremi と見事な連携プレーでゴールとなる。 結果的には1−4ではあったが、最初に述べた様に、リバプールのプ レイヤー達にとっては、有る意味でやるだけの事はやった内容の濃い ゲームだったようだ。 ベニテス監督もキャプテン Steven Gerrard も、『全体のパフォーマン スとしては決して悪くはなかった。1−4で負けた事を悔やむよりは、自 ら犯したミスから学び、次の試合に前向きに望む事が我々のやるべき 事だ』と答えている。 しかし、今回もチェルシーのディフェンスの素晴らしさ、そして相手のミ スや隙を見逃さないハイレベルな攻撃力を見せ付けられた4得点だっ た。 もう誰もチェルシーのパフォーマンスを “Boring” だとは中傷しないだ ろう。 下村 えり(Eri Shimomura) <Liverpool VS Chelsea> 05.10.2005, 4pm Stadium: Anfield Attendance: 44,235 Liverpool(4−5−1): Reina, Traore(Cisse 81), Carragher, Hyypia(Sinama Pongolle 71), Finnan, Riise, Alonso, Hamann(Sissoko 68), Gerrard, Garcia, Crouch Chelsea(4−3−3): Cech, A Del Horno(Huth 83), Terry, Carvalho, Gallas, Duff(Geremi, 76), Essien, Lampard, Makelele, Cole(Robben 67), Drogba ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼特派員レポート:「ゴールドフィッシュだより」 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「ゴールドフィッシュだより」 / ウエダミナコ 〜 Goldfish Liverpool Update / minako ueda 〜 ― 連載第27回 / 「ハッピー・バースデー・ジョン! 〜ジョン・レノン・ミュージアム in さいたま」 ― NLW 読者のみなさま、こんにちは! 先週号でも申し上げましたとおり、現在日本におります。正直、あまり 気の進まない帰国ではありましたが、帰ってきたらきたでそれなりに 有意義な出来事や出会いがあり、これも運命で、帰ってきてよかった かもと思いはじめています。 時間ビンボー症の私は、早速月曜日から、飛び込んできた仕事を始 めました。 10月22日〜30日に六本木ヒルズと渋谷 Bunkamura で行われる、東 京国際映画祭 (TIFF)の事務局での仕事です。映画祭の準備に追わ れて半端でない忙しさではありますが、一緒に働くヒト達に恵まれてい るので、それほど苦には感じません。また、この仕事を通して文化関 連のネットワークがさらに広がっていきそうなので、今後何かしらリ ヴァプールと繋いでいきたい、という期待と、知り合った人たちに密か にリヴァプールの良さを刷り込もう! というシークレット・ミッションも 遂行中です。 さて今週、ジョン・レノン・ミュージアムでは、ジョン・レノン65歳の誕生 日とミュージアム5周年を祝う特別イベントがあるということで、10月9 日(日)に行ってきました。 今年リヴァプールで行われたビートル・ウィークの「スカウスハウス・ツ アー」にも参加した、ハレルヤ洋子ちゃんとさやかちゃんも駆けつけて くれました! あれからまだ1ヶ月しかたってないんですね、今度は自 分の地元のさいたまでの再会というのも不思議な感じです。 まずはミュージアムのカフェへ。 満員だったので、待機をしているあいだに、カフェ前に展示されていた 「ジョン/ビートルズゆかりのパブ」を眺めてました。Jacaranda 、Ye Cracke 、Grapes 、Philharmonic Pub の写真や関連記事があったの ですが、Ye Cracke のパネルは写真を撮って、パブのスタッフや常連 のおっちゃん達に見せてあげようと思います。きっと喜ぶと思います! 9日、10日の2日間限定で、なんとミュージアム・カフェで「スカウス」が 食べられる! ということで、迷わずサンプリング。。。と思ったら、肉 が入ってることを忘れてました(私、肉がダメなんです。。。)。 当然ブラインド・スカウス(編注:肉の入っていないスカウスの俗称)な どはありませんので、肉だけとってもらってオーダーしました。さすが 万平ホテルオリジナルといった、ポッシュ・スカウス! 家庭で食べら れている、グダグダに煮込んで原料が溶けたスカウスとは異なり、ポト フに近い感じ。とても美味しくいただきましたが、つけ合わせの赤キャ ベツとビートルートがなかったのがちょっとさみしかったかな。。。 食事を終えてミュージアム・カフェを出て、入場前なのにミュージアム・ ショップを物色。 買い物を終えると、受付けの脇に、スーツ姿の男性が立っていて、「こ れは?」と思って話しかけてみると、ジョン・レノン・ミュージアム館長の 水沢氏でした! 今回の特別展「ジョン・レノンとリバプール」展のために5月にリヴァ プールに来られたとのことで、その時に自ら撮影した写真の数々も展 示してあるとのことです。水沢館長と、記念写真をパシャッ! そして館内へ入場。7分間のビデオ上映のあと、ゾーン1:少年時代の 記憶、ゾーン2:ロックンロール、ゾーン3:ザ・ビートルズ、とそれぞれ セクション分けされていて、その他に、ジョン・レノンのパスポートのス タンプからその足どりをたどる特別展示「パスポートから読み解くジョ ンの足跡3」もあり、興味深かったです。 エスカレーターの隣には、リバプールやイギリス土産で、リヴァプール FCとエヴァートンのスカーフとマグが置いてありました! そして上の階にあがると、ゾーン4:ジョンとヨーコの出会い(オノ・ヨー コさんのインスタレーションもあります)、ゾーン5:ラブ・アンド・ピース、 ゾーン6:イマジン、ゾーン7:ニューヨーク・シティ、ゾーン8:失われた 週末、ゾーン9:ハウスハズバンド、そして白を基調としたファイナル・ ルームに続きます。 今回の特別展「ジョン・レノンとリバプール」は、ファイナル・ルームを出 たところにあるイヴェント・ルームで展示されていました。ジョン・レノン の少年時代のベッドルームの再現が見モノです! このミュージアムで好きなところは、空間設計。スペースを贅沢に効果 的に使用しているところ。これもコンセプチュアル・アーティストのオノ・ ヨーコさんのプロデュースによるところだと思いますが、展示物や情報 をガチャガチャと押し込めるのではなく、特にゾーン5のラブ・アンド・ ピース、ゾーン9のハウスハズバンド、そして勿論、ファイナル・ルーム では、ただそこに座ってその場に浸っていたいと思うような、そしてジョ ン・レノンの生い立ちやジョンとヨーコさんのメッセージをゆっくりと思い 巡らせられるような、Physical なスペースだけではなく Mental なス ペースも与えてくれる、そんな場所です。 そして、今回の特別展示は The Mersey Partnership(リヴァプール観 光局)が協力ということで、入場券を買うとリヴァプールの日本語ガイ ドブックがついてきます。帰りがけに、来場したお客さん達がこのガイ ドブックを手にしているのを見ながら、そして会場入り口にどどーんと 掲げてあるピアヘッドの写真を見ながら、もっと多くの人たちがこれを 機にリヴァプールを訪れてくれたらいいな、と思いました。 「ジョン・レノンとリバプール」展は、12月28日まで開催。12月のジョン の25回目の命日付近には、ジョン・レノン・メモリアル・ウィーク(12月3 日〜9日)が開催されるとのことです。 受付のフロアスペースにもリヴァプールを紹介する展示がたくさんあり ます。是非、日本のなかのリヴァプールを感じに訪れてみてください! <ジョン・レノン・ミュージアム インフォメーション> 住所:〒330-9109 さいたま市中央区新都心8番地さいたまスーパーアリーナ内 電話:048-601-0009 FAX:048-601-0010 開館時間:午前11時から午後6時まで 休館日:毎週火曜日(火曜日が祝日の場合は営業し、翌水曜日を 休館)、年末年始 ホームページ:http://www.taisei.co.jp/museum/ それではまた! ウエダミナコ ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽「利物浦日記(2005年夏)」3 ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ 「利物浦日記(2005年夏)」 / Kaz 第3話 <聖地にて> 8月27日、ストロベリー・フィールドでガーデン・パーティーが行われた。 今年の「ビートル・ウィーク」フェスティヴァルのメイン・イヴェントのひと つであり、およそ70年続いたこの孤児院の、フェアウェル・パーティー でもあった。 ストロベリー・フィールド。 ビートルズ巡礼のためにリヴァプールを訪れる人で、この門の前に立 たない人はいないだろう。 あの静謐で思索に満ちた、幻想的ともいえる “Nothing Is Real” な佇 まいに、感動を覚えない人もいないだろう。この門の前で動けなくなっ て、何時間も過ごしたという経験を持つ人を、僕は何人も知っている。 もちろん今のストロベリー・フィールドは、ジョンが通っていた頃の姿と はまるで違う。 当時はこんなに鬱蒼と草木は茂っていなかったはずだ。ここから車も 出入りしていたし、すぐ目の前には大きな建物があった。ジョンが親し んでいた風景と、今我々が見ている風景は、まったく別のものなのだ。 でも『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』という曲の持つ神秘的 なイメージには、現在の姿の方がしっくりくる。これ以上ないくらいに、 ぴったりなのだ。 つまりは、「曲の抒情性に合わせるように、現実のストロベリー・フィー ルドの方が、その姿を変化させてきた」ということになる。 不思議な話だが、やはりそれは、ここを訪れるビートルズ・ファンたち の想いが、作り上げてきたものなんじゃないかと思う。いろんな国や地 方からやって来た、それこそ何十万人ものファンたちの想いが、今の ストロベリー・フィールドの姿を作り上げてきたのだ。 やはりこの場所は、「聖地」と呼ぶに相応しい。 さて、ガーデン・パーティー。 「あのストロベリー・フィールドの門の向こうに入れる」 もうそれだけで、今年のフェスティヴァルへの参加を決めたファンも多 いと思う。 それに加えて、5月いっぱいで孤児院がクローズになってしまったため に、「もしかしたらもう見られなくなってしまうかもしれない」と心配になっ てやって来たファンもかなりいるはずだ。 果たして、ガーデン・パーティーは大盛況となった。 シャトル・バスがひっきりなしに往復して次から次へとファンたちを運ん でくる。ビートルズ・バンドのライヴ演奏をメインに、サッカーやミニゴル フのアトラクションがあったり、コレクション・バザーや記念グッズの販 売コーナーが設けられていた。フードスタンドやトイレには長い長い行 列が出来ていた。それはまるで1日限りの縁日のようだったけれど、 祭りの後の寂しさが頭をよぎって、誰もが心から楽しめないでいるよう に見えた。 午前中は快晴だった天気は、イヴェントが始まる頃に突然曇りだし、 そのうちに雨模様になった。 強い雨ではなく、小雨と霧雨が交互にやって来るという、何というかデ リカシーの感じられる雨だった。 その雨が、あのストロベリー・フィールドの門と、そこから続く小径に漂 う寂寥感を、じわじわと優しく増幅しているように感じられた。 ストロベリー・フィールド正門のエリアは、当然ながら、感慨に耽ったり 写真を撮ったりするファンが後を断たなかった。しかし、ぎゅうぎゅうに 混み合うというほどではない。イヴェントが始まって2時間もすると、門 のこちら側には3〜4人のファン、という状態になった。おかげで僕は、 普段と変わらないあの「わび・さび」にも通じる静かな佇まいを、心置き なく味わうことができた。 ストロベリー・フィールドの門のそばで、目を閉じてじっと耳を澄まして みる。 降りしきる雨、風に揺れる木の葉、鳥のさえずり…。そして湿気を含 んだひんやりとした空気の感触、土や植物の匂い…。 夢と現実のボーダーが曖昧になってきた。そして、やっぱりこのフレー ズが浮かんだ。 “Nothing Is Real” つまり、「リアルなものは何もない」。 あるいは、「無こそリアル」。 この場所がこれからどうなるのか、それはわからない。 僕らの願いどおりこれからも聖地として大切にキープされて行くのだと すれば、こんなにハッピーなことはない。 しかし、もしもそれが叶わないとしても、そう悲観することはないのかも 知れない。僕らの心の中では、目に見えないものや形のないものだっ て、じゅうぶんにリアルだ。想いが続く限り、ずっとリアルだ。いつまで も…。 そう、それがきっと、「フォーエヴァー」ということなのだ。 (利物浦日記3・おわり) (この原稿に関連する写真は、ウェブサイトの「NLW フォト・アルバム」 ページに掲載しています。 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo220.htm ) ―――――――――――――――――――――――――――――― ▼スカウスハウス・ニュース ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** フットボール・チケット予約 ****** 「スカウス・ハウス」では、リヴァプールFCおよびエヴァトンFCの、ホー ムゲーム観戦チケットの予約を承っています。観戦をご希望の方に は、詳細をご案内いたします。希望カード&必要枚数にお名前を添え て、info@scousehouse.net までお問い合わせください。 *** 語学留学生募集中 ****** 「スカウス・ハウス」では、リヴァプールへの語学留学をサポートしてい ます。 最短で1週間の短期留学から長期留学、夏期休暇コース、さらには最 近人気のホームステイ留学など、幅広く対応しています。 詳細については、ウェブサイトの「語学留学案内」ページをご覧くださ い。 http://scousehouse.net/study/index.htm *** ビートルズ・ガイドツアー ****** 「スカウス・ハウス」では、リヴァプール&ロンドンのビートルズゆかりの 地を訪ねるガイドツアーをアレンジします。 ガイドはもちろん現地在住の日本人。レギュラー・ツアーのほか、 ちょっとマニアックなツアーも用意しています。また、ご希望により、プ ライヴェート・ツアーのアレンジも承ります。 ツアーの詳細は、ウェブサイトの「ガイドツアー」ページをご覧ください。 http://scousehouse.net/beatles/info.htm *** 原稿募集中 ****** 「リヴァプール・ニュース」では、読者のみなさんからの投稿を募集して います。 旅行記、レポート、研究、エッセイ、写真などなど、リヴァプール、ある いは英国に関するものなら何でも歓迎です。 お気軽にお寄せください。楽しい作品をお待ちしています。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ▽今週のフォト ―――――――――――――――――――――――――─ NLW □ *** 今週の「ゴールドフィッシュ」フォト ****** 今週も、ミナコさんから素敵な写真が届いています。 ウェブサイトの「NLW ゴールドフィッシュだより」ページをご覧ください。 http://scousehouse.net/magazine/goldfish27_photo.htm *** 今週のフォト・アルバム ****** 「ゴールドフィッシュ」以外の原稿にちなんだ写真は、「NLW フォト・アル バム」ページをご覧ください。 http://scousehouse.net/magazine/nlw_photo220.htm ■ NLW ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ リヴァプール・ニュース / News of the Liverpool World ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *** 毎週火曜日発行 *** □■ 第220号 ■□ ◆発行 SCOUSE HOUSE (スカウス・ハウス) ◇編集 山本 和雄 ◆ウェブサイト http://scousehouse.net/ ◇Eメール info@scousehouse.net ご意見・ご感想・ご質問など、お気軽にお寄せください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールマガジンは、以下の配信サーヴィスを利用して発行していま す。配信の解除やメールアドレスの変更は、それぞれのウェブサイト からどうぞ。 ◆まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000065878.htm ◇めろんぱん http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=000917 ◆メルマガ天国 http://melten.com/m/5593.html ◇カプライト http://cgi.kapu.biglobe.ne.jp/m/3487.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 無断での転載を禁じます。 Copyright(C) 2001-2005 Scouse House |