トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」

   



Vol.10 Premiership; Everton VS Manchester United, Goodison Park, 15.09.2007

from NLW No.313 - September 25, 2007  
バックナンバー

 
下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 Introduction:はじめに 】
2007年《Football の旅》開幕です。
ここの所、お家で大人しくBBCの“Match of the Day(マッチ・オブ・ザ・デイ)”を観るか、パブでスカイマッチを観戦するかで、スタジアム巡りからはちょっとご無沙汰しておりました。
…が、フットボール好きの虫がむずむず、やはりナマ観戦に勝るものはありません。
シーズンもリニューアルされたことだし、また新たな気分でイングランドのフットボールマッチをお伝えしていきたいと思います。Football Fanの皆様、どうぞお付き合いください。

【 Premier League 07/08:プレミアリーグ
まず、いくつかの注目チームの展望をまとめてみたい。

<Arsenal>
プレミアリーグ07-08も、開幕からはや1ヶ月が経ってしまった。今シーズンのスタートに当たって、私にとって1番のBig Newsと言えば、Arsenalのセンターストライカーであり、キャプテンでもあったThierry Henryが、まさかの移籍でバルセロナに飛び立ったこと。

昨年から噂はあったものの、実際に彼がプレミアリーグから去っていくなんて、多くのファンは想像したくなかったことだ。どんなアンチArsenalでも、Football Fanであれば彼のプレイに魅了されないはずはない。
バルセロナFCへの移籍は彼の残されたフットボール人生の中で最後の大仕事になるに違いない。バルセではすでに彼のネーム入りユニフォームが7万枚も売れているそうだ。彼のファンの一人として、彼が素晴らしい成績を残し、彼のエレガントなプレイが目の肥えたバルサ・ファンを魅了することを期待したい。

さてArsenalだが、Henryの代わりとなるストライカーを育てること、そしてヤングチームを1つのフットボールチームとしてまとめていくことが、Arsene Wenger監督の今シーズンの大きな課題であろう。
4試合を終えて、リーグテーブルでは2位。相変わらすのWenger Style、素晴らしいパスワークで昨シーズンから絶好調のオランダ代表Rovin van Persieやスペイン代表Francesc Fabregasなど中心にして、好調な出だしをみせている(今日の試合を終えてトップに躍り出た)。

<Manchester City>
今シーズン注目の新監督を迎えた注目のチームといえば、やはりこのチームが筆頭になるだろう。
Stuart Pearce監督に代わって、スウェーデン人のSeven-Goran Erikssonが就任。彼は2006年までイングランド代表を指揮(2002-06)していただけに、イギリスでは特に知名度が高い。それだけではなく、彼はスウェーデン、イタリー、ポルトガルの3カ国でリーグ優勝とカップ優勝をダブルで獲得した唯一の監督でもあり、大きな期待が寄せられている。

プレミアシップでの彼に求められているのは、イングランド代表チームでの戦術ではなく、彼がヨーロッパリーグで採用したスタイルだろう。
それをManchester Cityで何処まで披露してくれるか。すでに5試合を終え、リーグチャートでは5位と、Manchester Cityとしては見事なスタート。今後何処まで食い込めるかが楽しみなチームだ(今週末の試合を終えて2位に上昇)。

<Sunderland>
もう1チーム、リーグでの新人監督を擁するのがSunderlandだ。
昨シーズンは2部リーグに相当する「チャンピオンシップ」に所属していたが、元Manchester Utdのキャプテンで新人のRoy Keaneを監督に据えて見事に優勝、プレミアシップへの昇格を果たした。
大物新人監督の手腕が、早くもトップリーグで試されることとなった今シーズン、“今度こそはプレミアリーグに留まること”、それが全てのSunderland Fanが望んでいることであろう。“ヨーヨーチーム”のレッテルを剥がす事が出来るのか、どうか。新生Sunderlandにかかる期待は大きい。

<Liverpool>
最後に、スカウスハウスでは触れておかないといけない大物チーム“Reds”。
最高のスタートを切って現在リーグテーブルトップ。今シーズンにかけての意気込みはシーズン前の選手の売り買いにも現れ、マンUやスパーズと共に上位のハイ・スペンディング。その中でも一番のお買い物はスペイン代表のFernando Torres。彼は2試合目で初ゴールを決め、5試合で早くも3得点。すでにLiverpoolのスーパースターである。

縁起をかついでいるのか、今年は髭面のRafael Benitezも、インタビューでは好調な出だしを笑顔なしでは語れない様子。
さて、今年こそはプレミアリーグのチャンピオンの座を勝ち取れるのであろうか。

【 Today's View:今回の見どころ 】
いよいよ、今日の本題に入らせてもらおう。
今シーズン好調なのはLiverpool FCだけではない。同じくマージーサイドを代表する歴史あるチームで、“Toffees”の愛称で知られるEverton FCも順調な出だしを見せてくれている。
5試合終わって、現在3勝1敗1分のリーグ3位。獲得ポイントは、Liverpool, Arsenalの上位2チームと同じく10。文句なしの素晴らしいスタートである。

今日の勝負は、Homeでの対Manchester Utd。今シーズン始まっての最初の大一番だ。リーグ・チャンピオンが相手であるだけに、Evertonにとってはここが実力の見せ所ともいえようか。

しかし残念なことに、Manchester Utdは現在、上記のチームと離れた順位に位置し(試合前の時点で2勝1敗2分の8位)、昨年とは違って不本意なスタート。負傷者続出で、DFのGarry Neville、MF Owen HargreavesとMichel Carrick、そしてストライカーのWayne Rooneyまで足を骨折(またもや!)するなど、とことんついてない。

まして、5試合を終えてのゲーム内容がいただけない。どのゲームも殆どManchester Utdが支配する展開でありながら、得点に結びつかない。どんなに敵を崩しゴールチャンスを作っても、得点を決めなければ意味がない。サポーターの一人として強く願うことは、West Hamから高額で獲得したアルゼンチン代表FW Carlos Tevezや、イングランド代表MF Owen Hargreaves、同じくMFのLuis Naniらの新加入選手たちを上手くブレンドさせて、Rooneyらの欠場を早く忘れさせて欲しいものだ。

好調な出だしのToffeesが、チャンピオンを相手にどこまで戦えるのか。
先シーズンまでは、Manchester Utd戦となると守りに徹してたEvertonだが、現在の状況なら、あるいは攻撃的な展開に持ち込めるかも知れない。
対するManchester Utdは、この試合に勝てば3連勝。今までの不調を克服し、リカバリーしつつあることの証明となるだろう。
とにかく、後腐れなしの気持ちのいい良い試合をして欲しい。

【 Goodison Park:グディソンパーク 】
初秋を思わせる涼風が吹く中、今回のGoodison Parkも晴天に恵まれた。
Evertonにとってシーズン始まって初の大きなマッチとあってか、いつにも増しての群集がGoodison Roadを埋め尽くしていた。
好調なスタートを切ったEvertonだけに、尚更今日のホームゲームはマンUに打ち勝ちたい、悪くてドローゲームに持って行きたいところだろう。
ここで一つ触れておきたいことがある。
私にとってもとても残念なお話なのだが、歴史あるこのGoodison Parkとも、もうすぐお別れになることが最近決まった。
Everton FCの新しいスタジアムが、リバプール郊外(北東)のKirkbyに建設されることが決定したのだ。

Everton Fanの皆様はもうご存知だとは思うが、Goodisonに残るかKirkbyに移るかが、Everton FCのメンバーによる投票で決められた。
結果は、6割が移転に賛成、4割が反対。
民主主義多数決でニュースタジアムの建設が決定したわけだが、Everton Football Clubとしての素晴らしい歴史を考えると、個人的にはやはりこのGoodisonに残って欲しかった。

確かに、Goodisonに新しいスタジアムを建設することは、観客席の増量など無理な問題も多かったかもしれない。しかし、あんな郊外に5〜6万人収容の大きなスタジアムを建てることに意味があるのだろうか。
このManchester Utd戦でさえ満員とはいかなかった(今回3万9千人あまり)というのに…。
今日も賑わっているGoodison周辺の商店街も、スタジアムの移転とともに衰退していくのかと思うと、センチメンタルな気持ちになってくる。
今日のゲームはスカイマッチのため、12時(正午)キックオフ。中途半端な時間なので、お昼を持ち込むことにした。
Goodison Roadに面する聖ドミンゴ教会に入ると、マッチデイだけ催されるバザーカフェは大混雑。しかしサンドウィッチのお安いこと。スターバックス・タイプのカフェでは、普通2〜3ポンドもするのに、たった1ポンドとは。いつもながらの親切な笑顔の応対にも感動した。

スタジアムに入ると、すでに選手のフォーミングアップが始まっていた。
Evertonサイドでは、怪我で長く欠場しているTim Cahillの姿は未だ見られないし、元Manchester UtdのGKだったアメリカ人Tim Howerdも指の脱臼で離脱。今夏FC Cologneより加わったドイツ人GK Stefan Wesselsが初試合に臨むようだ。Middlesbroughから移籍したばかりのストライカーYakubu Ayegbeniの顔もみられた。
マンUサイドで残念なのは、元EvertonのストライカーRooneyが、まだ骨折のリカバリー中でプレイ出来ないこと。
今日の席はLower Bullens(バックスタンド下段)。すこし右ゴール寄りだが、まずまずの眺めで満足。

【 Kick Off:試合開始 】
<前半>

試合は正午ちょうどに始まった。
スタート直後はEvertonサイドが勢いよく前に出ようとし、ミッドフィールドでのバトルが始まるが、次第に主導権がマンUに渡り、掻き回されていく。

マンUはCarlos Tevezの賢いパスでEvertonサイドを揺さぶるが、Evertonの守りも硬く、ボールはゴールをそれて跳ね返えされる。

EvertonのレフトバックLeighton Bainesがインサイドボックスに向かいボールを走らせようとした時、後ろから追ってきたマンUのMichel Carikとクラッシュ。
ゴール横に倒れたBainesに、Evertonサポーターから“ペナルティー!”の声があがるが、ボックスの外での衝突としたレフリーからリジェクトされる。

30分過ぎにはManchester Utdに絶好のチャンスが。Ryan Giggsのコーナーキックを狙ったNemanja Vidicが、バランスを崩して惜しくも外す。
ハーフタイムわずか5分前には、今日はMFで結構良い動きをしていた(いつもはDF)Mikel SilvestreがEvertonゴール前で横倒れになる。
すぐに駆け寄ったチームメイトのRio Ferdinandが、かなり深刻と見た様子で監督エリアに交代のシグナルを送った。ボールを避けるためにスライドした瞬間に膝をツイストさせたようだ。Silvestreの代わりに、今シーズン新サインのLuis Naniが入る。

ハーフタイムに入る直前には、Evertonサイドに渡すべきボールを、機嫌を損ねたPaul Scholesがボールを無造作に放ったために、イエローカードをもらう羽目に。
前半のScholesには、EvertonのMikel Artetaへの不用意なファールもあった為に、ここでの警告につながったのだろう。

<後半>
後半に入るやいなや、Evertonサイドが活発に動き出し、迷うことなく攻めにでた。
ArtetaのコーナーキックをAndrew Johnsonがヘダーで上手く合せる。
しかしScholesの横割りにより、ボールはゴールを僅かにそれる。

53分にはマンUのチャンス。Tevezから受けたフリックパスを、今回見せ場の多いScholesがディフェンス陣を抑えて10ヤードボレーシュートを打つが、ボールはゴールの僅か頭上に飛び込む。

ここまでEvertonのディフェンス陣にしっかりマークされて辛抱が切れたのか、マンUのエースCristiano Ronaldoは、インサイドボックス目前までドリブルで持ち込み、3人のディフェンダーに囲まれた途端、ボックス内に倒れ込んだ。
しかしそれはダイビングとみなされ、レフリーはRonaldoにイエローカードを掲げる。Goodison Parkは一斉にブーイングの渦に包まれた。
後半72分、EvertonはLeon Osmanに代えてVictor Anichebe、Yakubuに代えてSteven Pienaarのダブルメンバーチェンジを行い、攻勢を仕掛ける。

しかし82分、マンUはNaniからのコーナーキックを、後方からEvertonのディフェンス陣に食い込む様にボールを上手く合わせたVidicが、素晴らしいヘダーでゴールを決める。
Goodisonの観客席から大きなため息が漏れた。
終了8分前に1−0とマンUのリード。

ドローに持っていこうとEvertonも全力でゴールを目指す。
84分、キャプテンPhil Nevilleに代わり、James McFaddenが起用された。スコットランド代表のMcFaddenは、先週行われたEuro 2008予選、アウェイでのフランス戦に出場。見事決勝ゴールを挙げる活躍を見せている。
McFaddenはこの試合でも素晴らしいシュートを放つが、マンUディフェンス陣とGKのVan der Sarによって妨げられた。


 
【 Ending:試合終了 】
試合はマンU Vidicのへダー1点で決着がついた。ホームでの試合だけにEvertonが上手く守りきり、ドローゲームでかたが着くのではと思っていたが、今回はManchester Utdに神様が味方した。
マンUにとっては、今シーズンの典型的なゲーム展開だったといえるかもしれない(良い戦いをすればゲームを落とし、あまり出来の良くない試合では終了直前にゴールが決まり勝利する…)。

試合を終えての両監督のコメントを、以下に紹介しておこう。

David Moyes (Everton):
良いゲーム展開を見せていたにもかかわらず、最後の最後で、しかもまたしてもコーナーキックで点を入れられてしまって、本当に残念でならない。しかし、早く気持ちを切り替えて、次に控える大きなマッチ、UEFA CUPに向けて万全を尽くすつもりだ。

Sir Alex Ferguson (Manchester United):
出だし好調でチームとして凄く成長をみせているEvertonに、彼らのホームで勝つことは難しいと思っていたので、本当に嬉しい。うちのディフェンス陣は守りだけでなく、ゴールも決められる。幅広く勝利に貢献してくれる。

この試合を終えて、Evertonは6位に下がり、Manchester Utdは8位から一気に3位へと上昇した。
クリスマス時期(中間期)にはこのリーグテーブルがどの様な変化をみせるのだろうか、益々楽しみである。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 07-08
 Everton VS Manchester United
 Goodison Park
 15 September, 2007  12:00 Kick Off
 Attendance: 39,364
  エバトン マンUtd
スコア 1(Vidic 83)
ターゲットショット
オフターゲットショット 11
コーナーキック
オフサイド
イエローカード
レッドカード
ポゼッション 45% 55%

 Everton
  Wessels, Hibbert, Yobo, Lescott, Baines, Arteta, Jagielka,
  Neville (McFadden 85), Osman (Pienaar 73), Johnson,
   Yakubu (Anichebe 74).
  Subs Not Used: Turner, Carsley.

 Man United
  Van der Sar, Neville (c) (O’Shea, 78), Ferdinand, Vidic, Evra,
  Fletcher, Scholes, Carrick, Giggs, Rooney, Saha.
  Subs not used: Kuszczak, Brown, Ronaldo, Solskjaer.

from NLW No.313 - September 25, 2007     

Copyright(C) 2008 Eri Shimomura & scousehouse

トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」