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Vol.6 Premiership; Everton VS Tottenham Hotspur, Goodison Park, 15.04.2006

【 まえがき 】
シーズンの終盤に入って、ますます白熱したゲームを展開しているプレミアリーグは、今まさに眼を離せない状態です。
リーグ降格圏争いもこれから秒読み、一戦一戦が物を言う接戦状態で、ニュートラルなフットボールファンにとっては一番面白い時期に来ているのではないでしょうか。
片や、下から3〜4チームのファンにとっては、毎週冷や汗ものでしょうが…。

今夏ドイツで開催されるワールドカップの影響もあってか、今シーズンは通常より早い展開のスケジュールが組まれており、終盤かなり集中したスケジュールになるチームもあります。
イースターのこの時期は、クリスマス、ニューイヤーと同様、Good Friday から Easter Monday の間の4日間に2試合が繰り広げられます。
シーズン終盤で怪我人や選手達の疲れも出だす頃で、益々監督の手腕が試される時期とも言えましょうか。

【 Goodison Park 】
本日も晴天なり!
毎度の事ながら、トフィーズホームの試合ではお天気にツキがあるらしい。春特有の雲交じりの晴天ではあるものの、雨の多いこの時期には珍しく、お天道様も見方についてくれた。

気分も爽快、今回は地元の電車と、「サッカーバス」という特別なサービスを利用してみた。
まず、丸一日使えるデイパス Saveaway Ticket を購入し(£2.10)、Liverpool Central 駅より Merseyrail に乗る。
2駅目の Sandhills で降りると、駅を出て直ぐ右手でフットボール・ファンを待ち構えているのが、サッカーバス(ダブルデッカーバス)だ。
Everton 、Liverpool のホーム・ゲームがある日限定で運行する、スタジアムへのシャトルバスだ。パスを見せて乗り込めば、そのままスタジアムの前まで連れてってくれる。

リバプールはロンドンの交通事情に比べると実にシンプルなので、初めてスタジアム入りする方でも、公共交通機関で結構簡単にたどり着ける。

サッカーバスを降り、スタジアムに沿って商店街の方向へと歩いていくと、丁度トテナム・ホットスパーの選手を乗せたバスが到着していた。
商店街のど真ん中の路上に止められたバスは、一瞬にして人目を集め、狭い歩道は野次馬の集団が埋め尽くされてしまった。
窓ガラスが黒くコーティングされているため、外から選手たちを見ることは出来ないばかりか、バスの回りは騎馬警察官にぐるっと囲まれていて、野次馬を寄せ付けないようにウマく警備されていた(おやじ並みの駄洒落ですみません…)。

ラッキーにも、バスの降り口からわずかに選手の顔が一瞬見えた。
ダビッツ、ロビー・キーン、キング、デフォー、ヨル監督…。うーん、しかしミドの姿が見えなかった。彼のトリッキーなプレイが見たくって楽しみにしていたのに、残念! 後で判ったのだが、彼は怪我で出場出来なかったそうだ。
人垣のなかでカメラを向ける。巨人(イギリス人)の壁が邪魔なのと、一瞬のショットテクニックが必要なのとで、ど素人のわたくしには至難の技だったが、たった一枚、イングランド代表のカリックを収めることができた。

ホッとしたところで、いつもの様にチッピー( Fish & Chips 屋さん)で腹ごしらえ。今日の試合は定時の15時始まりなので、チッピーの列にも動じない!
いつもこのスタジアムを訪れると何故か良いフィーリングにかられるのだが、今日のグディソン周辺は何時もより増して活気が感じられた。イースター休みというのもあるのだろう、家族連れの姿も多く見られた。

【 Tottenham Hotspur の歴史 】

いつもの様に、アウェーサイドのクラブの歴史に触れてみることにしよう。
Spurs(スパーズ)の愛称で知られている Tottenham Hotspur FC は、Arsenal FC と同じくロンドン北部のクラブで、多くのロンドンっ子に愛着を持たれている歴史あるチームである。

始まりは1882年、地元のクリケットクラブ Hotspur Cricket Club やグラマースクールの少年達により、Hotspur Football Club として創設された。
最初の5年間は公共のローカルピッチでプレーしていたそうだが、1888年に初めて、囲いのついた専用グランド Northumberland Park( Trulock Road )に移ることになる。

現在の White Hart Lane へ移転したのは1899年で、1901年と1921年には早くもFAカップの優勝を飾る。
その後はリーグ降格・昇格を繰り返すことになるが、1950-51年に初のリーグ優勝を果たし、1960-61年に初めてリーグとFAカップのダブル優勝(史上3チーム目)を達成する。

1970年代から80年代にかけては、グレン・ホドル、オジー・アルディレス、クリス・ワドル等のビッグネームが在籍し、FAカップ、リーグカップ、UEFAカップを二度づつ獲得する。

一番記憶に新しいのは、1990年代初期に、日本人にも馴染みの深いガリー・リネカーやポール・ガスコインなどのスターが大活躍し、FAカップ優勝を成し遂げ、再びスパーズファンを盛り上げた。

その後、リーグカップ優勝を1999年に、2002年は同カップ準優勝を勝ち取るが、リーグ優勝からは45年も遠ざかっている。

【 マルティン・ヨル監督 】
次々と監督を代えては解雇してきたスパーズだが、2004年よりオランダ人のマルティン・ヨルを迎え、長年の夢である「リーグ優勝」を目指している。
今季は現在リーグ4位につけ、来季のヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグ出場獲得権争いに同じロンドン北部のライバルチーム Arsenal と火花を散らしている。

ヨルの監督としての経歴は、1998年より6シーズン、RKC(オランダ)を指揮し、最優秀監督の名誉にも輝いた。選手育成等にも定評がある。
スパーズへの就任は、彼の監督人生で外国での最初の一歩であり、世界に名を残す大きなチャンスでもあるだろう。
選手時代にプレーした地という事もあってか、英国への尊敬の念もただならぬものを感じる。
選手売買におけるお金の使い方もかなりワイズで、経験豊富な優れたプレーヤーなどを移籍金無しやレンタルなどで獲得し、様々な国籍の選手達を一つのチームにまとめ上げている。

このチームのキーポイントは、FWのバラエティーさと安定した守りであろうか。
FWには、力強さと巧みな技を持つアイルランド代表のロビー・キーン、イングランド代表の俊足デフォー、それとトリッキーな技と巧みなヘディングを持つエジプト代表のミド。ディフェンスでは、スピード感溢れる攻撃力を持つイングランド代表DFレドリー・キングや、こちらもイングランド代表GKポール・ロビンソンが要となっている。

【 Before Kick Off 】
スタジアムの中に入ると、もうすでに両チーム選手のウォーミングアップが始まっていた。
今回チケット入手が遅かったせいか、わたしの席は Restricted View (一部視界が障害物で遮られるシート)ということであった。しかし実際に座ってみると、ホーム側ゴールが、柱で一部視野が遮られる程度で、大した事ではなかった。
それよりか、直ぐ左にある柵の向こう側が、スパーズファンで埋まっていることの方が問題だった。
別にわたしは構わないんだが、周りのエバトンファンの中には異常に中傷したり、野次を送る者がいて、それが観戦の邪魔になるのが、ちょっと…。

選手が入場し、お互いに握手を交わす。
選手全員の腕には黒いアームバンドが巻かれていた。構内アナウンスで、1989年4月15日の Hillsborough の惨事を追悼する意味でとの説明がされる。
Liverpool 戦の「フットボールの旅 Vol.1」でも説明したが、1989年のこの日、Liverpool ファンがFAカップの試合でシェフィールドの Hillsborough へ応援に行った際、試合直前に押し倒しになり96人が帰らぬ人となった悲惨な出来事である。
この日行われた、他の全てのプレミアシップの試合でも追悼された。

【 Kick Off 】
試合は3時ちょうどに始まった。
最初のショットはエバトンの James McFadden によるもので、相手チームのゴーリー Robinson の左頭上に大きく外れて行った。

エバトンサイドのプレッシャーに耐えた後、スパーズの反撃が始まった。
元 Leeds Utd の Lennon(MF)のプレゼンによる数々のチャンス。最初のターゲットショットは Lennon のアシストによるゴール前の Keane の鋭いショットであったが、エバトンゴーリー Wright によってセーブされる。
その後さらに、Lennon から素晴らしいボールを右サイドポスト前の Tainio(MF)がへダーに繋げるが、またしても Wright にブロックされた。
全体的に両チームとも守りが堅く、なかなか積極的に前に出ようという意志がうかがえない前半だったが、30分過ぎ、スパーズの Keane が何時もの如く器用なドリブルさばきで前に出ようとしたところ、エバトンの Stubbs(DF)にゴール前で引っ張られる。
このプレイに審判のホイッスルが響き渡るが、Keane のボールはゴールに収まっていた。
しかし彼のゴールが決まる前にホイッスルが鳴っていたので、ゴールは認められず、ペナルティー・キックが与えられることになった。

もちろん、PKを打つのも Keane 。左狙いと思われたシュートは、右隅のネットへと綺麗に収まった。1−0。
わたしの左隣のスパーズファン達から、歓声が一気に沸き上がった。
前半もほぼ終盤に差し掛かった38分、エバトンのキャプテン Neville(DF)のタックルに腹を立てた Gardner(DF)が食ってかかる一幕があり、両者とも仲良くイエローカードを戴く羽目になる。

何度かのターゲットショットはあったものの、全体的につかみ所の無い前半のゲームだった。
左右へと秒読みで移動するボールは高く上がりすぎで、パスワークも中盤でブレイクされ、クリエイティブなボールの動きとは程遠かった。ましてや、エバトンの動きにはがっかりさせられるものが多く、最近特に活気のある攻撃をみせてくれる Beattie(FW)の存在感も全く感じられなかった。

ハーフタイムを終えて後半に入る、両チームとも少しエンジンが掛かってきたか、新たな動きが見え出した。
後半のスパーズサイドは、イングランド代表でもある Defoe(FW)の動きがチームに好影響与えていた。
エバトンの Box Corner にいた Jenas(MF)へ、Defoe から素晴らしいボールが渡る。しかし Jenas の切れの良いショットは、またもや Wright が見事なスライディングカバーを見せ、弾き飛ばす。

スパーズサイドのコーナーキックでも、エバトンのディフェンダー Naysmith のエラーから Defoe にチャンスが渡るが、Wright のカバーにより、ここでも2点目を免れた。
ホームサイドのスタンドからは、なんとも言えないため息がもれる。

スパーズの連続攻撃に振り回されている感じもあったエバトンだが、Cahill (MF)のハーフボレーシュートが Robinson の頭上をかすったのを皮切りに、反撃に出る。
Osman(MF)からのパスが前へ前へと出ようとする Beattie に渡り、ゴールが決まった。グディソンに歓声が響き渡るが、直ぐにどよめきに変わった。オフサイドの旗が揚がっていた。同点ならず。残念!

しっかり Good ムードになってきたスパーズサイドの応援歌は、“僕らはアーセナルの上を走ってる〜”(リーグテーブルの4位争いを意味している)などといった歌に代わり、益々力強良くなる。

後半サブで入ったスパーズの Murphy(MF)が、次々に Defoe や Keane らの前線に素晴らしいパスを投げ、スパーズの動きにまたもや色を添えるが、エバトンのディフェンスも頑なに守りきった。

66分にはエバトンのモイーズ監督が、Simon Davis に代えて “最後の爆弾” Ferguson(FW)を送り込むが、残念ながら不発に終わってしまう。エバトンの選手として、あるいはフットボーラーとして、今シーズンが彼にとって最後のシーズンになるかもしれない。
試合終了間際、Defoe と Lee(DF)のセットアップにより、Keane の駄目押しのショットが放たれる。しかし力強さに欠けていて、簡単に Wright にセーブされた。
するともう1本、今度は Defoe が今度こそと駄目押しの鋭いシュートを放つが、右のクロスバーに当たり、大きく跳ね返った。

後半の Defoe の動きには、目を見張るものがあった。
もしかすると、スタンドにイングランド代表監督エリクソンの姿があったからかもしれない。
ワールドカップ出場選手の選出まで秒読みである今、イングランドの前線選びは特に緊迫している。Rooney( Man Utd )、Owen( Newcastle Utd )のレギュラー入りは誰もが予想出来るのだが、Owen の怪我もあり、Sub 選びは特に重要課題となっている。
現在のところ Crouch( Liverpool )、Bent( Charlton )、そして Defoe が有力候補であるが、この中の一人が涙を飲まなくてはならない。

結局、Keane のPKで試合が決まった。
後半は両チームともに攻撃態勢になったせいでフィールドにスペースが出来、特にスパーズのボールの動きが良くなった。
これによってクリエイティブな攻めを次々に繰り出したスパーズだったが、エバトンの Wright(GK)の素晴らしい守りが追加点を許さなかったのだ。

エバトンのモイーズ監督は、試合後こんなコメントを残している。
「文句なし、トテナムの方が断然良いプレイだった。うちの選手もすべき事は全て行ったが、歯が立たなかった。トテナムは最近の好調ぶりを全て見せ付けてくれたよ」と語った。

一方のヨル監督は、
「残り少ない試合の中で、難しいと思われていたこの場所で勝てたということは本当に素晴らしい。クリエイテイブなチャンスが掴めたのが勝因だったみたいだ。少し残念だったのは、追加点が取れなかったこと」
と、アーセナルとの4位争いに意欲的な態度を見せてくれた。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 05-06
 Everton Vs Tottenham Hotspur
 Goodison Park
 15 April, 2006  15:00 Kick Off
 Attendance: 36,920
  エバトン トテナム
スコア
ターゲットショット
オフターゲットショット
コーナーキック
オフサイド
イエローカード
レッドカード
ポゼッション 44% 56%

 Everton
  Wright, Neville, Yobo, Stubbs (Ferrari 59), Naysmith (Kilbane 84),
  Osman, Carsley, Cahill, Davies (Ferguson 66), McFadden, Beattie.
  Subs Not Used; Turner, Weir.

 Tottenham
  Robinson, Stalteri, Gardner, King (Davids 90), Lee,
  Lennon (Davenport 82), Carrick, Jenas, Tainio (Murphy 45),
  Keane, Defoe.
  Subs Not Used; Cerny, Barnard.

 
バックナンバー

Vol.1
CL LFC vs Chelsea
28 Sept, 2005


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02 Oct, 2005


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下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
from NLW No.247 - April 18, 2006     

Copyright(C) 2007 Eri Shimomura & scousehouse

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