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Vol.7 Premiership; Liverpool VS Blackburn Rovers, Anfield, 14.10.2006

from NLW No.270 - October 24, 2006  
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下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 まえがき 】
イギリスは道路脇に落葉樹が多いせいか、路上の落ち葉が、この所の秋雨にみまわれてこれでもかと言わんばかりにしがみついている。
日本では考えられないだろうが、イギリスではこれ(落ち葉)が原因で、この時期よく列車(BR)が遅れる。
日本で起こる秋現象が近所の秋刀魚を焼く匂いならば(最近はそういうのどかな風情はもうないのかな?)、こちらでは、落ち葉専用の清掃車ということになるかもしれない。この時期は毎日の様に、うるさい音を立てて、我が物顔で仕事に精を出している。

【 今回の見どころ&マーク・ヒューズ監督 】
朝のどんよりとしたお天気が嘘のように、午後過ぎからはフットボール開始を待っていたかの様な見事な秋晴れ。
アウェイゲームとインターナショナルフットボールでの2週間のブレイクを破ったアンフィールドも、活気を取り戻した。

さて、イギリスのプレミアリーグ(PL)だが、新しいシーズンが始まって早くも2ヶ月が経ち、ほぼどのチームも7ゲームを終えたところである。
未だ始まったばっかりと言っても過言ではないが、上位チームは納得する顔ぶれがちらほらと...、しかしそこにリバプールレッズの名は見当らない無い。現在10位と言う不本意なスタート。
残念ながら初戦のシェフィールドUTD(PLに昇進したばかりのチーム)と引き分け、9月始めにあったダービー、エバトン戦では3−0の完敗、先週のボルトン戦でも2−0で負けるなど、不運続きである。そろそろ本来の調子を取り戻し、勝ちだして欲しいリバプールレッズである。

 <Premiership Table(試合前のランキング)>
  Team P PTS
Man Utd 16
Chelsea 16
Bolton 14
Portsmouth 13
Everton 13
Aston Villa 13
Reading 13
Arsenal 11
Blackburn 11
10 Liverpool 10
 
 <Premiership Table (昨シーズン:2005−06)>
  Team PTS
Chelsea 91
Man Utd 83
Liverpool 82
Arsenal 67
Tottenham 65
Blackburn 63

片や、今日のレッズの対戦相手ブラックバーン・ローバーズは、なんとレッズの1つ上、現在10位(PL20チーム中)に付けている。先シーズンは6位に食い込み、UEFA Cupの出場権も獲得した。

2004年からスタートした監督マークヒューズの、これからが本番とでも言えようか。元マンチェスターユナイテッドの名ストライカーであった彼は、現役時代より攻撃的な性格で負けん気も強かったのであるが、そのフットボールへの執念が今またブラックバーンの監督として開花しつつある。

監督としての経歴は、現役引退後すぐにウェールズ代表監督に就任し、惜しくも2006年ワールドカップへの出場は果たせなかったが、素晴らしいチームワークとバランスのとれた攻撃力を見せてくれた。

その後、グレン・スーネス監督が引退したブラックバーンと契約。彼が2年間プレーしたことのあるイーウッドパークへのカムバックが決ったのである。

今日はダービーではないが、同じ地域ノースウェストのチーム同士の対決だ。
続けて勝ち星が欲しいリバプール、しかも強いホームでの試合に、ブラックバーンはどの様に戦うのか? あのマーク・ヒューズが守りに徹する事は無いであろうが???

【 ブラックバーン・ローバーズの歴史 】
ここでアウェイチーム(Blackburn Rovers FC)のクラブヒストリーに触れてみたい。
ブラックバーンはイングランドの北西部に位置し、イングランド国内でも歴史的にフットボール熱狂区である。
また、ブラックバーンは、ボルトン・ワンダラーズらと同じく、1888年に創設された初のフットボール・リーグを構成した12チームの一つでもある。

クラブの始まりは1875年11月5日、King William Street にある St Leger Hotel で開催された地元活性化会議にて教師や教会関係者が集まる中、設立が約束された。

都市の商業的活動の中心にいた人物達の後援によりチームを強化、1800年代後半にFAカップを6度獲得する。
1910年代にリーグを2度制覇するが、その後は下部リーグに低迷。

1990年代に入ると地元の富豪でローバーズの根強いファンでもあった今は亡きジャック・ウォーカー氏が大量の私財を投売り、栄光をもう一度と願いを託し、チーム建て直しに力を注ぐ。
91年に70年代後半のビックネーム、ケニー・ダルグリッシュ(元 Liverpool のストライカー)を監督に迎え、再びトップリーグに返り咲いた。
1994-95シーズンには、フットボールファンの記憶にも新しい、昨シーズン引退した元イングランド代表のストライカーでキャプテンのアラン・シアラーやクリス・サットンを擁してプレミアリーグを制覇した。

1998-99シーズンに再び降格してしまったブラックバーンだが、2000-01シーズンにプレミアシップへ再昇格、2002年にはリーグカップを制している。

【 アンフィールド 】
今日の席は、KOP Stand とは真反対側の Anfield Road Stand 、ゴール手前の前から4列目。
全体のゲームを観るのには最悪な席だが、選手をズーム感覚で見ることの出来る、齧り付きの席だった。
アンフィールドに来ると何時も感じるが、今回は又座った席が Anfield Road 側だから余計にか、観客相がとてもインターナショナルな雰囲気で、あちこちから外国語や外国語風アクセントが聞こえて来る。さすが、リバプールFC! ファン層も厚いんだなっと...。

お天気に恵まれたのは良かったが、太陽と丁度真向かいで超眩しくって、もしかしたら、向こう側のゴールが見えないかも…と、ちょっと不安な思いにかられながらも、厚着してきたカーディガンを一枚脱いだ。
ここの所寒かったのに、イギリスのお天気ほど想像が付きにくいものは無い! だから、イギリスの紳士は何時も傘を持ってるってのか…とは言っても今時そんな紳士もロンドンの City(ロンドンでは銀行街をシティーと呼ぶ)でさえも殆ど見かけないけれど。

【 試合開始 】
リバプールレッズは現在、ホームでの無敗記録を19試合に伸ばしている(プレミアリーグの中でたった2チーム)。また、先シーズンでは、ブラックバーン相手にホーム、アウェイ共、1−0での勝利を飾っている。

試合は、ブラックバーンのキックオフで15時ジャストに始まった。今日はどんな試合を見せてくれるのか、ワクワク...。

試合直後はどちらもこれと言って大きな動きはなく、お互い様子を伺っている感じだったが、10分過ぎくらいからリバプールの動きが活発になる。
Gerrard, Pennant, Alonso, Riise の素晴らしいムーブメントとでボールが Crouch に渡りシュート。しかし、ブラックバーンDF Zurab Khizanishvili がクリアー。
その後も Bellamy から Crouch へとインサイドボックス前でパスが入るが、どうも上手くかみ合わない。
今日の前半の動きで目立つのは両陣のMF。
リバプール側では Pennant がミッドフィールドの動きを活発にしてブラックバーンの攻撃をもしっかりシャットアウトしている。
反対に、ブラックバーンの Bentley は攻撃面に大きく貢献し、前線に凄く良いパスを送っている。17分の先制点も彼の役割が大きかった。

David Bentley の長い正確なパスがゴール前左で待つ McCarthy(南アフリカ代表)に渡るや否や、彼の鋭いシュートでゴールが決まる。
1−0。アウェイのブラックバーンが先制点を取る。
その直後も Gerrard がそらしたパスを上手く拾って McCarthy がゴール目掛けてボールを蹴るが、Jose Reina(リバプールGK)によってセーブされる。
先制点を取られたリバプールは、なかなかリズムを取り戻せず、1点ビハインドのままハーフタイムに入ってしまった。
後半に入った後すぐに、リバプールは Pennant を下げて Luis Garcia を投入。超攻撃態勢を選択した Benitez 監督の作戦が上手く運ぶのかどうかに注目。

早速 Luis Garcia が Crouch 目掛けて高いボールを送るが、上手く届かずに Crouch の頭をすり抜けて相手のゴールキックとなる。

攻撃に人を揃えたせいか後半はリバプールの動きが活発となり、ブラックバーンはそれを必死に抑えた。
リバプールMF Alonso のモーションであと少しで同点にまで追いつくかのように思えたが、Crouch 、Garcia と最後がかみ合わずにゴール前でもたつく。

しかし64分、とうとうリバプールにチャンスがやってきた。
MF Aurelio の右コーナーキックがゴール前をすり抜けて左サイドへ抜けようとしたところを、FW Bellamy(ウェールズ代表)がノーマークで鋭いへダー。同点! 1−1! 
これが Bellamy にとってリバプール移籍後初ゴール。しかも前クラブ相手のゴールとあって、尚更嬉しさが伝わってきた。

調子を取り戻したリバプールは、逆転を狙って攻撃を続ける。
70分頃の Bellamy のダイレクトショットや、2回続けての Riise のシュートは、ブラックバーンGK Friedel がセーブ。
反対に79分にフリーキックを取ったブラックバーンは、キッカーに MF Robbie Savage を起用。しかし惜しくもインチバーの頭上をかすり、再びリードするには至らなかった。

ホームのリバプールは、最後まで勝利を諦めずに総攻撃を続ける。
90分にはインサイドボックス外からの Alonso のシュートが大きくゴールを外れ、続いて炸裂した Riise のボレーシュートはまたもや Friedel にブロックされる。

試合はこのまま1−1で終了。ドローゲームに終わった。
まさにデスパレーションと言えるリバプールの必死の攻撃を、ブラックバーンは硬いディフェンスで守りきった。

リバプールの監督 Rafael Benitez の試合直後のコメントでは、17分の先制点を取られたことについて、
『左側ディフェンスが甘かった。ディフェンダーがインサイドボックス内に固まってしまうというポジショニングのミスがあった』

Bellamy のゴールについては、
『彼のゴールで救われた。このゴールは彼にとっても大切なものだ、これを皮切りに彼の素晴らしいゴールをもっと期待したい』
と語った。

一方、ブラックバーンの Mark Hughes 監督は、
『リバプールホームでの圧力は予想通りだったが、その中でも上手く泳ぎきった気分だ。本当ならあと少しでリードも可能だったのだが』
と、敵地でのドローゲームと今日のパフォーマンスに満足のコメントを残した。

リバプールはこのゲームを終えて10位、ブラックバーンは9位...。
リバプールのホームでの負け無し記録は続くが、アウェイゲームでの安定した勝利を掴んでいかない限りは、上位への進出は難しいところではないだろうか。
余談ではあるが、今日のチェルシー対レディングの試合で、チェルシーGK Cech がゴールポストでの衝突事故で頭蓋骨骨折という大きな負傷をおった。ブレインダメージの疑いもあるとのこと。
一日も早い彼の復帰を、心から祈りたい。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 06-07
 Liverpool Vs Blackburn Rovers
 Anfield
 14 October, 2006  15:00 Kick Off
 Attendance: 44,206
  リバプール ブラックバーン
スコア
ターゲットショット
オフターゲットショット 10
コーナーキック
オフサイド
イエローカード
レッドカード
ポゼッション 64% 36%

 Liverpool
  Reina, Riise, Hyypia, Carragher, Finnan, Aurelio, Gerrard (captain),
  Alonso, Pennant, Crouch, Bellamy.
  Subs; Dudek, Garcia, Gonzalez, Paletta, Zenden.

 Blackburn
  Friedel, Khizanishvilli, Ooijer, Neill (captain), Pedersen, Emerton,
  Bentley, Savage, Nonda, McCarthy.
   Subs; Brown, Mokoena, Gallagher, McEveley, Roberts.

from NLW No.270 - October 24, 2006     

Copyright(C) 2007 Eri Shimomura & scousehouse

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