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Vol.8 Premiership; Manchester United VS Liverpool, Old Trafford, 22.10.2006

from NLW No.271 - October 31, 2006  
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下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 まえがき 】
プレミアリーグ・サッカーファンの皆様こんにちは!
2週続きでのレビューですが、今回は残念ながらパブ観戦になってしまいました。マンUのメンバーでありながら、肝心のリバプール戦のチケットが手に入らないとは“何たる事か”っと腹も立ちましたが、まあ、気持ちを切り替えて、今日はリバプールFCサポーターだらけのパブへ乗り込み、一人マンUの応援に励みたいと思います(笑)。

【 今回の見どころ 】

 <Premiership Table(試合前のランキング)>
  Team P GD PTS
Chelsea 10 22
Man Utd 12 19
Bolton 17
Portsmouth 16
Everton 7 16
Aston Villa 5 15
Arsenal 7 14
Reading 1 13
Fulham -3 13
10 Blackburn -1 12
11 Liverpool 0 11
12 Man City -7
13 Wigan
14 Middlesbrough -5
15 Tottenham -5
16 Newcastle -5
17 Sheff Utd -8
18 Watford -6
19 West Ham -6
20 Charlton -9

プレミアリーグは、上記のテーブルをご覧の通り、10月21日土曜日の試後の結果、チェルシーが1位へ返り咲き、マンUが2位へそしてリバプールは11位となっている。

前節、ブラックバーンと引き分けてホームでの無敗記録を20試合に伸ばしたリバプールだが、今後アウェイでの勝利を掴んでいかない限りは上位への昇進は難しい所だろう。
シーズン始めは、Hyypia(DF)やCarragher, Riise, Alonso(いずれもMF)と次々の怪我に悩まされて、厳しいスタートとなったのだが、今は少しづつ本来のリズムのを取り戻そうとしている段階だろうか。攻撃的には、中盤から作り出すクリエイティブなパス攻撃と鋭いミドルシュートなど、バラエティーに富んでいて、上手く繋がって行きさえすれば、全く問題はない。現時点の穴はやはり守りだと思う。
先シーズンまで好調だった Reina(GK)の不調については、こちらのメディアでも大きく取り上げられているが、Benitez 監督はインタビュー等では腫れ物に触る感じで、その話題を避けているのがありありと解かる。

一方マンUは、シーズン始まるや否やのFW Van Nistelrooy のレアルマドリッドへの移籍で、一時は肩を落としたファンも多かったと思われる(私もその一人)。しかし試合を重ねて行く度にその不安は飛んで行った。長期膝の怪我で欠場していたストライカーの Solskjaer(ノルウェー代表)や、同じく足の複雑骨折をおったストライカーの Smith(イングランド代表)が戻り、Rooney, Saha に加えてフォワードの層がより厚くなったからだ。

先週のアウェイでのウィガン戦(3−1)でも、マンUの攻撃が爆発した。
試合直後に先制点を入れられたにも拘らず、マンUの総攻撃が次々にウィガンサイドに襲いかかり、同点、逆転、更にダメ押しと、その強さを見せつけた。
イングランドのファンとして少し残念なのは、Rooney が今ひとつ点が取れていない事。がしかし、彼の巧みな技やパワフルなドリブル、見事なパスは相変わらず世界レベルで、全てのマンUの勝利に貢献している。今やマンUにとって無くてはならない存在が Wayne Rooney と言っても過言ではない。

この2チームは、今現在順位としては2位と11位とで離れてはいるが、地理的にお隣同士、歴史的にも最高のライバル意識を持つ故に、必ず見どころのある、面白い試合をするのだ。私情を挟むと、ホームでもあるしマンUには絶対に勝って欲しいのだが、今日の予想はドローゲーム。リバプールはそう簡単にマンU相手には負けてくれないだろう。

【 パブ "Fly In The Loaf" 】
今日の試合はSKY(ヨーロッパのサテライトTV)マッチで、1時のキックオフだ。
通常スカイマッチが有る場合は近所のパブに出かけることが多いのだが、今回はCAMRA(Campaign for Real Ale)が出しているパブガイド“Good Beer Guide 06” を見て、面白そうなパブを選んで行ってみることにした。
選んだPubの名前は、"Fly In The Loaf" 。
訳すと「パンに入ったハエ」?? ぐうぁー超珍名!
新しいパブではあるが、上質のリアルエールを沢山置いてあるとのこと。行かないわけにはいくまい。
花見の場所取りではないが、1時のキックオフではあるものの、TVスクリーン前の席を獲得するには「最低1時間前には…」と思い、丁度12時ごろにパブに着いた。

シティーセンターに近く、リバプール大学へ上る坂道の途中にあるのだが、もうひとつの私の連載『リアルエールのすすめ』で紹介した“フィルハーモニックパブ”の目と鼻の先である。
大学や大聖堂(教会)などが立ち並ぶこの辺りは、アカデミックな雰囲気があるし、最近はトレンディーなカフェやレストランが目立つようになった。
このパブもわりと最近のオープンのようだが、建物自体は古く、外観に残された文字から、昔はベイカリー(パン屋さん)だった事がうかがわれる。しかもこのパン屋さん、王室御用達のポッシュなパン屋さんだったらしい。
もしかしたら、この変なパブの名前も、ここが王室御用達のパン屋だったことをパロディにしてるのかもしれないと…これは私の単なる想像である。

店内に入っても、新しさの中に奥深い重厚な雰囲気があり、入り口のモザイクフロアーや豪華なシャンデリア、木彫りのカービングなど、建築の作り同様に古いビクトリア時代の匂いが漂ってくる。
思ったより人が少なく、スクリーンの前の最高の席を獲得できて、超御満足。
今日のパブ・サンデーランチは、ヨークシャー・プディング(ヨークシャー地方のパンらしきもの)とラム、ローストポテト、グリーンピース、煮野菜添え。もちろんソースはグレービー。
クオリティーの高いリアルエールと、お皿に盛りだくさんのサンデーランチを食べ終わった頃には、このパブも満員御礼、立ち飲みをする人までがスクリーンの周りを囲んでいた。
いよいよ、試合が始まりそうだ。

【 試合開始 】
今日のオールドトラフォードは、プレミアリーグ始まって以来最多となる観客が入った。7万5828人。
また、マンUのMF Paul Scholes の500試合出場の記念マッチにあたり、マンUのレジェンドでもあるボビー・チャートンから記念のシルバープレイトが Scholes へ渡された。

<前半>
定刻1時にユナイテッドのキックで試合が始まった。
両者とも試合直後から積極的な動きをみせて、右へ左へとボールが弾むが、決定的なチャンスには至らず、シュートは入らない。

10分過ぎに、ユナイテッド側がキックしたボールをクリアーしようと左ゴール前に出たリバプールGK Reina が、マンUの Fletcher の割り込む様なドリブルによりボールを見失ってしまう。パブの中に一瞬息を呑むような緊迫感も漂ったのだが、リバプールのDFによってゴールは守られた。

試合も20分をまわる頃から、ピッチのセンター附近を中心に、火花が散るかの様なボール獲得争いが繰り広げられる。
マンUがコンスタントに攻撃を仕掛け、所々で不意打ちを掛けるかの様にリバプールのブレイク攻撃が入る。

20分過ぎには、マンU MF Carrick からのコーナーキックを Vidic がフリックして Saha へ送ると、見事なボレーシュートがリバプールゴールを襲うが、GK Reina のパンチでセーブ、MF Garcia がそれをフォローしてボールをセーフエリアに導く。

33分には、リバプール左ウイングMF Gonzalez が風を切るような俊足のドリブルでマンU DF Ferdinand を抜き、ボールが左サイド前方のFW Kuyt に渡ったかと思うと、ダッチマンの鋭いへダーシュートがマンU GK Van der Sar 目掛けて…しかし惜しくもゴールにならず、セーブされてしまった。

前半残すところ後6分、ユナイテッドにチャンスが来た。
センターを走る Scholes がボールを頭で合わせて、左中央を走る Rooney へ送ると、そのボールをさらに左サイド Giggs へパス。Giggs はゴール目掛けてボールを蹴るが、ボールの勢いが無くゴールまでには至らずとおもいきや、その間に更に中央ボックス内に入ったノーマークの Scholes が、こぼれ球を逃がさずスライディングでゴールネットへと押し込む。リバプールDF Hyypia も必死にそれを追うが、ボールはしっかりとネットへと収まった。1−0。
記念すべき500回出場達成のメデタイこの日に、本人自らが花を添えた Scholes の素敵なゴールだった。

リードされたリバプールは、どうしてもハーフタイム前に追いつきたい一心で相手ゴールへとボールを運ぶ。
前半最後、Alonso の右インサイドボックス前の鋭いシュートには誰もが一瞬息を呑んだが、ほんのインチの差でゴールをそれてしまった。
惜しい!

<後半>

メンバー交代なしで両チームとも後半に入る。
マンUは相変わらず前方の Saha 、Scholes が交互に攻撃。リバプールはMF Gerrard のシャープなパスを Garcia がゴール前で上手くあわせるが、今ひとつボールに力が無く、マンU GK Van der Sarに何の問題もなく止められてしまった。

そして65分、ユナイテッドに追加点のチャンスが来た。
足首に怪我を負ったリバプールDF Carragher が、インサイドボックス左で必死にボールをクリアーしようとするが、ボールはゴール左前に舞い上がる。それを待っていたかの様にマンU DF Ferdinand が頭で落とし、クールにボールを中央に運んでゴールネット右上を目掛けて左足を一閃。先シーズンに続いてのリバプール戦での彼のゴール!
2−0。ディフェンダーの Ferdinand にとって、めったに無い素晴らしいチャンスを生かしたゴールだった。

リードを広げられたリバプールは、70分に入って Alonso に代えて Crouch を投入。
「ちょっと遅かったんじゃないかな〜」という気もする選手交代だが…。

Crouch 投入後も、ミッドフィールドでのユナイテッドの動きは変わらぬばかりか益々活発になり、リバプールの攻撃もままならない。
後半72分には Crouch がロングボールをキャッチしようとするマンU GK Van der Sar に食い込んで行くが、ほんの少し Van der Sar の足を取ってしまう。Van der Sar が倒れこむと、イエローカードが Crouch に出された。
Van der Sar の倒れ方もオーバーリアクションで、イエローカードは少し辛い気もしたが、先週起きたチェルシー対レディング戦のチェルシーゴーリーの大怪我で、(ゴールキーパーとのむやみな衝突は避ける様にと)審判のジャッジもきついものになっているのかもしれない。
 
【試合終了】
以上、ドローという私の予想は嬉しくもはずれ、2−0でホームのユナイテッドの勝利に終わった。
リバプールはこれでユナイテッドに11ポイントの差をつけられて11位に停滞、ユナイテッドは得失点差でチェルシーを抜き、1位に返り咲いた。

今シーズン更に好調のドロクバやミリオンプレーヤーのシェフチェンコを先頭に勝ち続けるリーグ・チャンピオン、チェルシーの足元を揺り動かせるのは、マンチェスターユナイテッドだけなのか? 早く風向きを変えてチャンピオン争いに参加して欲しい、リバプールレッズである。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 06-07
 Manchester United VS Liverpool
 Old Trafford
 22 October, 2006  13:00 Kick Off
 Attendance: 75,828 (Record United crowd)
  マンUtd リバプール
スコア
ターゲットショット
オフターゲットショット
コーナーキック
オフサイド
イエローカード
レッドカード
ポゼッション 54% 46%

 Man United
  Van der Sar, Neville (c) (O’Shea, 78), Ferdinand, Vidic, Evra,
  Fletcher, Scholes, Carrick, Giggs, Rooney, Saha.
  Subs not used: Kuszczak, Brown, Ronaldo, Solskjaer.

 Liverpool
  Reina, Finnan, Hyypia, Carragher, Riise, Garcia,
  Alonso (Crouch, 70), Sissoko, Gerrard (c),
  Gonzalez (Pennant, 53), Kuyt.
  Subs not used: Dudek, Warnock, Paletta.

from NLW No.271 - October 31, 2006     

Copyright(C) 2007 Eri Shimomura & scousehouse

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