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Vol.15 Premiership; Liverpool VS Everton, Anfield 19.01.2009

from NLW No.372 - January 27 2009  
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下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 Introduction:はじめに 】
NLWをご覧の皆様、遅くなりましたが、“明けましておめでとうございます”。
2009年最初の『Footballの旅』のキックオフです。
世の中は不況のどん底で、毎日あまり明るいニュースもなく、暗いムードが漂う中ではありますが、気持ちを新たに、気合いをいれて、前向きにそして楽しくフットボール観戦記をお届けできればと思っております。
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。

【 Anfield:アンフィールド 】
今年最初のプレミアーリーグ観戦がリバプールのダービーになるとは…なんというLucky! お陰さまでとても良いスターを切れた気がする。
今回のダービーはケーブル放送の都合で月曜日のナイトゲームになったのだが、1時間前にアンフィールドに着くと、すでにサポーター達の群集に飲み込まれそうな賑やかさだった。
真っ暗な空とは対照的に眩しいくらいライトアップされたスタジアムの中に入ると、Evertonチームが早々とウォーミングアップを始めていた。
今日の席はAnfield Road(KOPの反対側)Goalの裏側だ。向こう側のGoalまで遠いものの、2階席とあって眺めも良く、全体の試合の流れは把握出来そうだ。
グランドにLiverpoolの選手達が姿を現すと、未だ空席の目立つ客席から大きな喝采と拍手が沸きあがった。

【 今回の見所 】
プレミアリーグは、先週末(1月17&18日)の試合終了後、マンチェスターUtdが今シーズン初めてリーグテーブルのトップに躍り出た。
しかも彼らは未消化試合を一つ残している。先日のカーリングカップのセミファイナル(準決勝戦)では、迫るダービーを辛うじて振り落とし、4-2(2戦合計4-3)で決勝に駒を進めた。

そんな好調な出だしを見せているマンチェスターUtdのSir Alex Ferguson監督に対して、先週メディアにチラッと不満を漏らしたLiverpoolのRafael Benitez監督だが、その後Liverpoolは足踏み状態。
どうやら、Sir AlexのマインドゲームにBenitez氏も嵌ってしまったとみえる。

その発端はFergusonの何気ないコメントだった。
“今リーグの上位を守るLiverpoolもきっと19年も待ち続けたタイトルを取るのにナーバスになってるに違いない”
この言葉がカチンと来たBenitez監督、今まで我慢していたFerguson監督への不満を爆発させたようだ。
いかにもFerguson監督らしい挑発(すみませんね〜)に、まんまとひっかかってしまった。よりによってこの大事な時期に…。
また、それをメディアがしっかり料理して大きく報道してしまうのが、このFootballの世界。

まあ、どっちのチームも言ってしまったものはしょうがない、後ろを振り向かず前に進むしかないのだと…Manchester Utdサポーターのわたしが言うのもなんなのだが…。

今日の試合に話を戻すことにしよう。
永遠のライバルでもあるお隣Everton! 今までのダービーの結果には触れないで…(実はかれこれ10年もアンフィールドで勝利を味わってない)、最近のEvertonはリーグ戦において6試合負けなし、リーグテーブルも浮上してきた(現在6位)。“あっぱれ!”である。
しかしチーム事情は決して楽ではない。昨年から怪我人が続出し、要となるフロントの3人(Yakubu, Aiyegbeni, Saha)が離脱。さらに、ベルギー代表のMF Fellainiまでもを累積警告で欠いての布陣となる。
しかし嬉しいことに、ハムストリングス(腿裏の筋肉)の負傷で4ゲームも欠場となっていたYoboはデフェンス陣へカムバックすることになった。

Liverpoolも、前節Stoke戦を故障欠場していたMF Alonsoがミッドフィールドセンターに、DF Arbeloaがディフェンス陣に加わったことで、Jamie Carragherがセンターバックに戻る事になった。

Liverpoolが優勝へのプレッシャーに打ち勝ち、一歩一歩勝利を手にしていけるのか、方や好調なEvertonがLiverpoolの優勝への道を阻止するのか。
今年の最初のダービーで、どのような戦いが繰り広げられるのか、非常に楽しみである。

【 Kick Off:試合開始 】
アンフィールドならではの“You'll Never Walk Alone”の儀式が終わると、いよいよ試合開始である。ホイッスルと共にEvertonのキックでスタート。

<前半>
Evertonは勢い良く前に出る。今夜のダービーをエキサイティングなゲームにさせてくれそうな予感。
今夜1発目のターゲットキックはやはりEverton。FW Anichebeの鋭いボレーがLiverpoolのゴール左に突き刺さるかに見えたが、Reinaが倒れ込んで阻止。ヒヤッとする一場面だった。

よいスタートを切ったEvertonは、今日たった1人のストライカーと言えるAnichebeと、ミッドフィールドの範囲を超えて鋭い働きを見せるCahillとの連携プレイが際立っていた。

その後LiverpoolもEvertonのファールでフリーキックを得てからは、ボールのポゼションをEvertonから奪い取った。
そして試合開始13分にはLiverpoolにチャンスが巡る。
FW Kuytがゴール脇、バックポストからシュート、しかし惜しくもDF Bainesに身体を張ってブロックされた。
前半のEvertonの動きは6ゲーム負けなしの自信にあふれ、ディフェンスの壁も厚く、Liverpoolの優勝への道を狭く険しいものにしていた。

両チームとも一歩も引かずにミッドフィールドで激しくボールを奪い合う。選手たちのゴールへの執念は高まる一方だが、得点に結びつきそうな大きな動きがない。
エキサイティングな試合展開を期待したが、余りのタイトゲームで20秒毎にレフリーのホイッスルが鳴り、フリーキックが繰り返され、観衆もイライラを隠せない様子。
とは言っても未だ試合は始まったばかり、焦らずじっくり観賞したい。

26分にはEverton MF Cahillのへダーがゴールに迫るが、Reinaによって止められてしまう。
その直後27分、Liverpool FW Torresのスパートを阻止しようとブロックしたEverton MF Pienaarにこの試合1枚目のイエローカード。

前半もハーフタイムに近くなると、Liverpoolサポーターのゴールへの期待も益々高まる。
しかし、こういう時に何かやってくれそうな主将Gerrard君、今日はポジションが深く、どうもディフェンシブムード。なかなかセンターラインを越えてEverton陣営に入って行くことができない。

ハーフタイム直前、Evertonゴールボックス外でLiverpoolのAlonsoとEvertonのAnichebe激がしくぶつかり合い、地面に崩れる。
どうも頭同士の衝突らしい。フィジオ(トレーナー)が駆けつけ、多少時間はかかったが、二人とも元気にピッチに戻ることが出来た。

結局観衆の期待は裏切られ、前半のゴールは見られなかった。

<後半>
朝からぐずついた天気に見舞われたリバプールだったが、夜になって小雨がちらついたかと思うとハーフタイムにはそれが雪へと変わり、激しい横殴りになってきた。

Liverpoolのキックで後半が始まった。
どちらのチームも前半と同じメンバー構成で、無我夢中にゴールを目指す。
49分、Torresがペナルティーボックス内で倒された。Liverpool陣営はEverton DF Jagielkaのファールとペナルティーをアピールするが、レフリーは腕を振り、プレーオンのジェスチャー。

51分にはEvertonのArtetaがKuytへのチャレンジでイエローカードを貰う。それにもめげずArtetaは前へ前へと何時もの素晴らしい縦パスを出そうとするが、なかなかうまくつながらない。

激しいEvertonのチャレンジ(アタック)にLiverpool陣営も警告をアピールするが、レフリーは無造作に首を振る。アンフィールドの群集も次第に不満を隠せなくなって来た。あちこちから野次が飛ぶ。

66分にLiverpoolサイドのメンバーチェンジがBenitez監督から言い渡される。FW Keaneに代えてFW Benayounの投入。
今日はTorresのパートナーを務めたKeaneだったが、これと言った見せ場を作れなかった。本当に残念だ。

選手交代から直ぐ、Gerrardお得意の20ヤードショットがKOP側のゴールに美しく決まった。1-0。

彼のゴールのお陰で、両チームとも火がついた様に動きが活発になる。Evertonは必死に同点ゴールを目指し、Liverpoolも2点目を狙う。

EvertonはArtetaのフリーキックからCahillがヘダーを打とうとするが、Skrtelがクリアー。Liverpoolもゴールを目指しボールを前へ前へと走らせる。
84分にはEvertonの美しい連係プレイからOsmanの20ヤードショットがReinaを襲うが、ゴールならず。
そして誰もがホームLiverpoolが1−0で逃げ切りかと思った終了3分前、BenayounのファールからEvertonにフリーキックが与えられた。
もちろん、蹴るのはその道のスペシャリストArteta。正確で速いボールをゴール前に送ると、Liverpoolのディフェンスをわずかな隙をついて、これまたお得意のCahillがへダーシュート。ゴールネットに綺麗に収まった。1-1。同点!

アンフィールド内は一瞬ため息に包まれ、同時にEverton側(Anfield Road左コーナー)からは歓声が沸いた。

【 Ending:試合終了 】
負ける訳には行かないLiverpoolはウイニングゴールを目指して最後まで諦めない。GK Reinaも必死に前線を走るBabelにボールを送るが、与えられた僅かなロスタイム2分も経過。
Liverpoolのホームでの勝利はならず、地元ライバルEvertonの執念と堅い守りでドローに終わった。
Liverpoolにとって今シーズン5度目のホームドローである。ニュートラルな者にとっては平和的結末、実に力の入った楽しい観戦だった。

次の試合(1月25日のFA Cup)も、両チームはこのアンフィールドでの対戦が決まっている。
メンバー構成も含めて、多少違った戦い方になると思われるが、これまた楽しみである。

最後に両チーム監督の試合後のコメントを簡単にご紹介して終わりにしたい。

LiverpoolのRafa Benitez監督は、
『今日の引き分けは確かに残念である。フリーキックを与え、しっかり守れなかったのが勝てなかった理由だと思う。しかし、優勝のプレッシャーは感じてない。これでマンチェスターUtdとも対等に戦えるわけだし、我々はプラス思考でこれからの1ゲーム1ゲームをしっかりものにして行くしかない』

次のFAカップのEvertonとの対戦については、
『FAカップは今日とは全く違った戦い方になると思うが、こちらも良い結果を目指し、リーグ優勝への糧となる様に繋げて行きたい』
と前向きなインタビューだった。

EvertonのDavid Moyes監督は、
『誰がみてもフェアーな結果だと思う。リーグトップのチームと対戦するのはやはりしっかり守るしかないと思った。ここのところ試合も好調でチームとしても自信がつき、一丸となってまとまってきた』

次回のFAカップLiverpoolとのアンフィールドでの対決については、
『いずれにしろアンフィールドでの試合は毎回とてもキツイ。全力で望むしかないだろう』
と力の入ったコメントだった。

後半に入ったプレミアリーグのトップ&降格争い、そしてカーリングカップ&FAカップと、これから益々カラフルにヒートアップしそうな、イギリスのフットボールである。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 08-09
 Liverpool VS Everton
 Anfield Stadium
 19 January, 2009  20:00 Kick Off
 Attendance: 44,382
  リバプール エバートン
スコア 1(Gerrard68) 1(Cahill87)
ターゲットショット
コーナーキック
ファール 20 17
オフサイド
イエローカード 2(Penaar,Arteta)
レッドカード
ポゼッション 53.8% 46.2%

 Liverpool
  Reina, Carragher, Hyypia, Skrtel, Aurelio, Kuyt, Gerrard,
  Alonso, Riera (Babel 89), Keane (Benayoun 67),
  Torres (Leiva Lucas 85).
  Subs Not Used: Cavalieri, Dossena, Arbeloa, Mascherano.
  Goal: Gerrard 68.

 Everton
  Howard, Hibbert, Lescott, Jagielka, Baines, Osman, Arteta,
  Neville, Pienaar, Cahill, Anichebe.
  Subs Not Used: Nash, Van Der Meyde, Castillo, Rodwell,
  Jutkiewicz, Gosling, Kissock.
  Booked: Penaar 27, Arteta 51.

from NLW No.372 - January 27 2009     

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