トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」

   



Vol.18 Premiership; Manchester City VS Chelsea,
City of Manchester Stadium 05.12.2009

from NLW No.400 - December 15 2009  
バックナンバー

 
下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 Introduction:はじめに 】
フットボールファンの皆様、少し早いのですが『メリークリスマス!』。
ここイギリスは師走に入ってやっと平年並みの寒さに突入し、しみじみと又ジワジワと寒さが身にしみる今日この頃です。

サッカーと言えば、先日、来年南アフリカで開かれるワールドカップの組み合わせが決まりました。
イングランドはグループC。めきめきと力を付けて、今夏のコンフェデレーションズカップでも決勝に勝ち残ったアメリカと、プレーオフでロシアを破って本大会出場を決めた スロベニア、そしてアフリカの中でもかなりの実力チームと伺うアルジェリアであります。
イングランドにとっては希望のあるグループとは思いますが、1戦1戦ベストを尽くしてして勝ち進んでいかなければなりません。

日本も色々と話は飛び交っている様ですが、たとえ対戦相手が全てワールドランキング上位のチームであっても、何が起こるかわからないのがワールドカップ。
目標高く持って 全力で頑張って欲しいですね。

さて、プレミアリーグも中盤を迎えています。
今年は上位争いの幅が広がる面白い展開。まだまだ5〜6チームに優勝の可能性があります。クリスマスからお正月にかけてますます目の離せない、Excitingなフットボール観戦になりそうです。

【 Today's View:今回の見所 】
今日お伝えするのは、12月5日にシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムで行われたマンチェスター・シティー対チェルシー。
開幕6連勝という素晴らしいスタートを切ったチェルシーは、現時点で2位マンUに5ポイント差をつけて首位を逃走中だ。
チェルシーの試合レビューは本当に久しぶりで、『フットボールの旅Vol.3』でお届けした2005年10月の「エバートンvsチェルシー」以来、実に4年ぶりとなる。
そのときの監 督はあのJose Mourinhoだった。彼が2007年9月に突然辞任してからというもの、チェルシーの指揮官の顔はめまぐるしく替わっている。
Mourinhoのあとを受けたAvram Grantは、リーグでは優勝したマンチェスター・ユナイテッドにわずか2ポイント差の2位、チャンピオンズ・リーグでも準優勝という成績を残 したものの辞任。2008年に就任した元ポルトガル代表監督のブラジル人Luiz Felipe Scolariは8ヶ月で解任され、オランダ人Guus Hiddinkがシーズン終了まで、暫定的にロシ ア代表と兼任するという形で指揮を執った。
そして迎えた今シーズン、長いことACミランを率いたイタリアの名将Carlo Ancelottiを新監督に招聘したのだ。

Ancelottiは選手の能力を的確に判断し育成する能力に定評がある。それに加えて、チェルシーの悲願であるチャンピオンズ・リーグを2度も制している。栄光あるFAカップを 置き土産に去ってしまったHiddinkに後ろ髪を引かれていたサポーターたちを納得させるだけの実績とカリスマ性を持つ名監督といえるだろう。リーグ・チャンピオン奪還とヨ ーロッパ初制覇に向けて、順調な進撃を
続けている。

方や、ホームチームのマンチェスター・シティー。
チェルシー同様、大富豪がオーナーが着き、大型補強を敢行してシーズンに臨んでみたものの、最近リーグでは7連続ドロー、足踏み状態が続いている。しかし嬉しいニュース も入ってきた。今週行われたリーグカップで、同じロンドンの強豪チーム、アーセナルに打ち勝ち、準決勝に駒を進めたのだ。彼らとしては、この幸運を今日の結果に結びつけ ることが出来るのかが今日の鍵だろう。

【 City of Manchester:シティ・オブ・マンチェスター 】
初めてこのスタジアムを訪れて1年が過ぎた。昨年のマイナス気温と違って穏やかな気温にはなったが、あいにくの雨模様。
マンチェスターのシティー・センターからバスに乗ると、10分もしないうちにスタジアムにたどり着く。満員のバスの中では勢い余ったチェルシーサポーター達が応援歌を連発 。まるでバスを乗っ取られたかのようだった。
シティー・スタジアムに着いても雨の勢いは収まらず、試合開始も近いので中に入ることにした。
北の国イギリスは12月も21日までは刻々と日没も早まり、4時前には暗闇に包まれる。しかしスタジアムの中は眩しいほどのライトで照らされ、ライトブルーに包まれたブラン ドニューの美しい内装にとても和まされる。
昨年同様、今年もメインスタンド上段の座席を選んだ。最高の眺めである。急斜面の上り下りには多少眩暈がするが、チェルシー戦のチケットであっても、そう苦労せずに手に 入れられるのは、このニュースタジアムのキャパだからだと感謝しなければならない。
とは言えチケットの値段は通常よりも高く、50ポンド(約9千円)近くもした。
それに見合うだけの試合をして欲しいものである。

【 Kick Off:試合開始 】
予想どおり、会場のアナウンスが満員御礼、過去最高の入場者数と発表。フットボール・ファンでびっしりと埋まった素晴らしいスタジアムにOasis(マンチェスター出身のバ ンド・オアシスは、マン・シティーのサポーターとして知られてる)の音楽が堂々と流れる中、2つのビックスクリーンに選手たちが映し出され、ピッチに登場。握手を交わし 、いよいよ試合開始だ。

<前半>
試合は、サテライトTVの中継の関係で、通常とは違う午後5時半に始まった。
シティーの今日の顔ぶれはGiven, Toure, Lescott, Bridge, Barry, Wright-Phillips, Tevez, Robinho, Adebayor等とスター選手がずらりと揃った。
元祖シティーの人気者 Steve Irelandは怪我で欠場のようだ。
チェルシーサイドも、今日はCech, Terry, Ashley Cole, Essien, Ballack, Lampard, Deco, Drogba, Anelkaとスター選手が勢ぞろいだ。どちらも、負けられない、絶対に落と したくない試合である。

ホイッスルが鳴るや否や、まずはチェルシーが仕掛けてくる。通常通り早い動きで、Drogbaにボールを廻そうとするが、ラインズマンの旗が挙がる。オフサイド。
開始5,6分、両チームにゴールのチャンスが生まれる。
シティーのWright-Phillipsがクロスシュートを放ち、チェルシーのDrogbaも鋭いサイドシュート。しかしどちらもがっちりとキーパーによって阻止された。

そして7分36秒、試合は動いた。
Anelkaのアシストボールがゴール前で待ち構える両チームの選手に当たりバウンス、最終的になんとAdebayorの背中に当たって跳ね返り、ボールは無情にも自陣ゴールに吸い込 まれた。1−0。チェルシー先制!

20分過ぎには、オンゴールをマークしたAdebayorが左サイドアウトオブボックスより強烈なシュート。しかしチェルシーのLampardがブロックし、ボールはゴールを逸れた。

26分にも惜しいシーンがあった。右コーナーからのボールがスイングし、ペナルティーボックスの外に転がった。中央から勢い良く走ってきたシティーのBarryがシュートを打 つが、ボールはポストの上へ。スタジアムに大きなため息が漏れる。
その後もシティーは攻撃の手(足というべきか)を緩めない。
そして迎えた36分、待望のホームゴールが決まった。決めたのはオウンゴールを献上したAdebayor。
左からのコーナーキックをチェルシーGK Cechがパンチング。そのボールをWright-Phillipsがシュート。その跳ね返りを左サイドで待ち構えていたAdebayorは見逃さなかった。 お見事! 1−1。シティーが同点に追いつき、会場全体が歓声で大きく揺れた。

ハーフタイム直前の43分には、シティーToureのLampardへのファールにより、チェルシーにゴール前でのフリーキックが与えられる。
Drogbaの素晴らしいキックは僅かにゴール上に外れ、またしても会場内に大きなため息が漏れた。

前半は1−1。勝負は後半に持ち越された。

<後半>
同点に追いついて勢いづいたシティーは、後半に入っても前へ前へと出る。
オフサイドトラップにも掛かるが、54分、暴走するシティーTevezを止めようとしたチェルシーDF Carvalhoがファウル。イエローカードが受ける。
フリーキックはペナルティーボックスのすぐ外という絶好の位置。蹴るのはもちろんアルゼンチン代表Tevezだ。ゴールポストが引き寄せたかの様に、ボールはキレイにネット に収まった。名GK Cechの手も届かない。2−1。シティーがついにリードを奪った!

リードされたチェルシーは、挽回しようと強気でゴールに向かう。
62分にはチェルシーサイドは2人のサブを投入。Carvalhoに代えてBellettiを、そして今日は見せ場がほとんどなかったBallackに代えてMikelを起用した。

そして70分台にはイエローカードが続出する。
なかなか同点に追いつけないチェルシーは、フラストレーションが溜まったのか、73分にBelletti、続いて5分後にIvanovicが警告を受ける。

試合はクライマックスを迎えた。
81分過ぎ、サブで入ったばかりのシティーDF Onuohaが、左インサイドボックス内でDrogbaに足を絡ませる。
いつものパターンであるが、背中を銃で撃たれたかの様なDrogbaのドラマチックな倒れ方…思わず笑ってしまいそうになったが、このプレイは完全なファールだった。
『ペナルティー!』
一瞬にしてスタジアムが凍りつく。
PKを蹴るのは、その道のザ・プロフェッショナルFrank Lampardだ。これまで彼がPKを失敗したのを見たことがない。
しかし! 幸運の女神は今日はシティーに味方した。Lampardがゴール左に蹴ったボールは、アイルランド代表守護神Givenによってセーブされた。あっぱれゴーリー!
どうしても1点が奪えないチェルシー。
86分、ゴール前で待ち構えるDrogbaにボールが渡る。チェルシーの攻撃の核である彼は、プレミアリーグの中でも強さ、巧みさ、速さを兼ね備えたベスト・ストライカーの1人 である。鍛えあげた肉体と野獣の様な目、そして磨き上げられたスキル。ペナルティーボックス内で彼と対等に渡り合うには、それこそ人間離れした集中力と速さ、そして強靭 なフィジカルが必要だ。並みのディフェンダーではまったく勝負にならない。そのDrogbaにチャンスボールが渡り、右足でシュート。しかしボールはゴールの右に大きくそれた 。珍しい、彼がこんなチャンスを逃がすとは…。

【 Ending:試合終了 】
結局試合は、2−1でシティーの勝利に終わった。
現在リーグトップのチェルシーを相手に、シティーは見事にゲームをコントロールした。シティーのチームワークが光ったゲームだった。

真正面から攻撃を挑むシティーのようなスタイルは、チェルシーのようなテンポの速いチームを相手にすると仇になる場合がある。しかし最後まで攻撃の手を緩めず、完全に守りきった。
素晴らしく前向きなゲームだったと思う。最初から最後まで迫力があり、スキルフルな、そしてドラマティックなゲームだった。

ゲームの流れは、Frank LampardのPK失敗で決定的となった。
チェルシーはツキもなかったかもしれないが、少ないながらもいくつかあったチャンスを確実にものに出来なかったのが敗因だろう。

これで1位チェルシーと2位マンUとの差は2ポイントに縮まった。
その下も数ポイント差でアーセナル、アストン・ビラそしてスパーズが追いかける。
優勝争いはまだまだこれから。ひとドラマもふたドラマもありそうだ。

【 監督インタビュー 】
Manchester City Mark Hughes監督
『今週はリーグカップの準々決勝を勝ち、現在トップのチェルシーにも白星とは本当に素晴らしい週になった。最初から終わりまで全員が一丸となり、チェルシーの攻撃にも打ち勝った。チームプレイの勝利と言えよう。これからもファンの期待に応えられるよう、益々力を付けて少しずつ前進していきたい』

Chelsea Carlo Ancelotti監督
『結果的に、非常にがっかりさせられたゲームだった。チャンスをものに出来なかったのは大きいが、審判の2回のミスジャッジにはかなり落胆させられた。まだリーグトップは変わりがないので、このポジションをキープし、1試合ずつ勝っていくしかない』

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 09-10
 Manchester City VS Chelsea
 City of Manchester Stadium
 05 December, 2009  17:30 Kick Off
 Attendance: 47,348
  マン・シティ チェルシー
スコア
(Adebayor 37,Tevez 56)

(Adebayor 8og)
ターゲットショット
コーナーキック
ファール 14 17
オフサイド
イエローカード
レッドカード
ポゼッション 47% 53%

 Man City
  Given, Richards(Onuoha 69), Toure, Lescott,
  Bridge(Kompany 76), De Jong, Barry, Wright-Phillips, Tevez,
  Robinho(Zabaleta 90), Adebayor.
  Subs Not Used: Taylor, Johnson, Santa Cruz, Petrov.
  Goals: Adebayor 37, Tevez 56.
  Booked: Barry.

 Chelsea
  Cech, Ivanovic, Carvalho(Belletti 63), Terry(Malouda 88),
  Ashley Cole, Essien, Ballack(Mikel 64), Lampard, Deco, Drogba,
  Anelka.
  Subs Not Used: Hilario, Joe Cole, Zhirkov, Paulo Ferreira.
  Goal: Adebayor 8(og).
  Booked: Terry, Carvalho, Belletti, Ivanovic, Ashley Cole, Deco.

from NLW No.400 - December 15 2009     

Copyright(C) 2014 Eri Shimomura & scousehouse

トップ・ページ>フットボール>エッセイ「Footballの旅」