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Vol.19 Premiership; Liverpool VS Tottenham, Anfield 20.01.2010 |
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from NLW No.403 - January 26 2010 |
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バックナンバー |
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下村えり
Eri Shimomura |
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。 |
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【 Introduction:はじめに 】 NLWをご覧の皆様、遅くなりましたが『明けましておめでとうございます』。
今年もスカウスハウス共々、「Footballの旅」を宜しくお願いいたします。
クリスマスからお正月に掛けて、イギリスは全国的に寒波に見舞われました。
リバプールもセフトンパークの池がすっかり凍り、4日から15日までしっかり雪が覆い、冷凍庫での生活でした。
雪もはじめは珍しくもあり、美しくもありでよかaったのですが、時が経つにつれ、通常の様に身動きがとれない状態に困惑する日々となりました。
予期せぬ突然のゲストに戸惑うのは日本もイギリスも同じですかね(笑)。
さて、フットボールですが、年が明けてプレミアリーグも後半に突入しました。
予期せぬ雪の到来もあって、リーグを含め、多くの試合が延期になりました。今日紹介する試合も、1月10日の予定が延期となったものです。
プレミアリーグの優勝圏内争いも今シーズンは賑やかな顔ぶれで、マダマダ様々な可能性を残しています。これからの数ヶ月、カップゲームを含めて、目が離せないシーズンになりそうです。
【 2009-2010プレミアリーグ後半 】 12月から1月にかけての時期は、プレミアリーグのチームにとって、大きな決断を迫られる時期でもある。
8月に始まったシーズンも半分の5ヶ月が過ぎ、その結果と後半の見通しを踏まえて様々な処置が下されるわけだ。
最近起きた大きな出来事は、マンチェスター・シティのショッキングな監督解任事件。まあ、ショッキングとは少し大げさかもしれないが、タイミング的に「今やらなくても…」「結果を出したゲームの後にクビですか?」と問題視する意見が巷に飛び交った。
Mark Hughesの行く先が危ういことはフットボールファンなら誰でも知っていたことで、予想外の出来事ではなかったわけだが、自分に置き換えて考えると、少し心が痛んだ。
Hughesが率いたシティは、リーグではトップ4射程圏内の6位、カーリング・カップではアーセナルを破って準決勝に進出していた。決して恥ずべき成績ではない。
やはりミリオネアをオーナーに持つからには、このようにいささか理不尽な仕打ちも覚悟しなければならないのであろうか。
しかも後任Roberto Manciniの名前が発表されたのはHuge更迭の直後であった。ストーリーのシナリオはもうずっと前から出来上がっていたわけである。
危ないのはマン・シティに限ったことではあるまい。私の予想ではとっくの昔に“オサラバ”になってもおかしくない監督の一人は、リバプールのRafa Benitezである。未だに首が繋がってるのには幾らかの訳がありそうだ…。
表面的には、熱烈なファンのサポートや彼のリバプールFCに対する情熱や過去の功績も評価して、ということであるが、実際は今彼を裁くと契約済みの4年間の給料(2000万ポンド)を全額支払わなければならず、巨額の負債を抱えたリバプールには大きなネックになっている、ということらしい。
しかし、このまま結果を出さなければリングにタオルが投げ込まれるのも時間の問題。現在リバプールFCのバックグランドでは、それらを天秤にかけてどちらを取るべきか仁義無き戦い繰り広げられている…かもしれない。
監督だけに限ったことではない。選手の移籍マーケットも、1月末までオープンになった。各チーム大手を振って選手の売買ができるわけだ。
まず一番に入ってきたニュースは、今日の対戦相手スパーズが、オランダのVan Nistelrooyの獲得に動いているらしい、という話。マンUより追い出され(というかファーガソンとそりが合わなかった)、2006年に世界のリアルマドリッドへと移籍したもののスタメンからは外され、出場機会に恵まれていない。スパーズは彼をローン契約でと考えているようだが、どうもVan Nistelrooyに興味を示すクラブはスパーズだけではなさそうだ。数日前にウエストハムを買い取ったアイスランドのオーナーSullivanとGoldの2人も狙っているという話もある。
どのクラブも、後半戦線をどう切り抜けていくかはこの時期の補強に大きくかかわってくる。監督や経営陣の腕の見せどころというわけだ。
【 今日の両チーム 】 さて、話を今日の両チームに戻して、最近の彼らの道のりを簡単にたどってみたい。
まずはホームのリバプールFC。シーズン開幕前は、悲願のリーグチャンピオンの座も“今年はいけるかもしれない”という思いは、ファンだけではなく、一般のフットボール・ファンにも共通の認識であった(私もその1人)。しかし、その期待が裏切られるのにそんなに時間はかからなかった。それに加えてまさかのグループステージでのヨーロッパCL敗退。
そんな彼らにとって、残された王冠はFAカップしかない。その3回戦が行われたのは、先週のことだった。
相手はプレミアリーグの一つ下のリーグ、チャンピオンシップで現在降格ゾーンを行ったりきたり(現在24チーム中20位)のレディングである。
プレミア上位のチームになると、格下相手となるFAカップの3回戦あたりでは、スタープレイヤーを休ませて2軍の顔ぶれで戦うことも珍しくないのだが、リバプールはいつもどおりの主力体制で臨んだ。
しかし最初の試合は1−1のドロー。先手を取られた後、ジェラードのアシストにカイトが上手く合わせて同点に追いついたものの、後半は攻め込まれた。GKレイナの活躍がなければ勝ちを譲っていてもおかしくない試合だった。残念だが観ていてプレミアリーグの余裕は全く感じられなかった。
そしてアンフィールドでの再試合。相手のオウンゴールにより1−0でリードして後半ロスタイムを迎えるも、終了間際に同点PKを決められて延長に。そして延長後半に逆転を許し、1−2でまさかの敗退となった。
さらにその3日後に行われたリーグ戦・対ストークでも、後半ロスタイムに同点とされて1−1のドローに終わってしまった。
年末から4試合連続で勝ち星がなく、不振を極めるリバプールである。
片や、スパーズは今年初試合となったFAカップを4−0でPeterboroughに勝ち、4回戦に駒を進めたものの、4日前に行われたリーグ戦ではHullと0−0でのドローで終わった。
とはいうものの、スパーズとしては先シーズンのこの時期は降格ゾーンの真っ只中、現在上位4位まで駆け上ってきたのだから、新監督Redknappの功績は見事なものだ。
この両チームの試合の歴史を辿ってみると面白いトリビアが。
1986年以降のリーグ戦において、ホームでのスパーズ戦22回のうち、リバプールはたった1度しか試合を落としてない。その唯一となったアンフィールドでのスパーズの3ポイントは1993年、あのTeddy Sheringhamが2点を決めて2−1で逃げ切ったということだ。Sheringhamという選手は、どこのチームに行っても、印象に残る素晴らしい足跡を残している選手だったとつくづく思う。
【 Anfield:アンフィールド 】 先週までの大雪に比べれば遥かに穏やかではあるが、さすがに夜は風の冷たさが身にしみる。
当初は今年初試合として1月10日に組まれていたこの試合。積雪の為に延期になり、今日20日に行われることが発表になったのは1週間前のことだった。日曜日の午後から平日の夜に変更という悪条件をものともせずにチケットはソールドアウト。観客4万2千人でびっしり埋まったアンフィールドは、冬の夜の寒さを感じさせない。
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今日の席はアンフィールドロード・スタンド。KOPとは反対側のゴール裏だ。席に着くとスパーズの選手達がウォーミングアップを始めていた。
今日は残念なことにリバプール側はジェラードやトーレスも怪我で欠場、そしてスパーズサイドもレノンの姿が見えない。噂によるとレノンはグローイン(足の付け根)の怪我で2〜3週間の離脱らしい。
リバプールはスタープレイヤーだけではなく、先週のFAカップ・レディング戦で多くの怪我人を出し、今日の試合は数人を除いては2軍状態である。
選手達が入場、お互いにエールを送り、握手を交わす。
【 Kick Off:試合開始 】
おなじみの“You'll Never Walk Alone”の儀式が終わったアンフィールドに、試合開始のホイッスルが響き渡った。
<前半> リバプールのキックで試合が始まった。両チームともボールを数秒とキープすることができない。高く上がったボールがミッドフィールドを境に左右を行ったり来たりの展開。
しかし、それから僅か数分後に試合が動いた。
開始6分、リバプールGK Reinaが蹴ったボールをKuytが上手く胸で受けてボールを殺し、Aquilaniにパス。ドリブルで切り込んだAquilaniはペナルティーエリア直前でディフェンダーに倒されるが、そのときボールは再びKuytがホールド、右足を大きく振り抜いて放たれたシュートがスパーズゴールの左隅に突き刺さった。
1−0。幸先の良い豪快なゴールに、アンフィールドじゅうに歓声が響き渡った。
スパーズは同点に追いつこうと必死に前に出るが、GK Gomesからのボールを上手く繋げることが出来ない。JenasとPalaciosのミッドフィールドコンビが今ひとつ上手くかみ合わない。
今日のリバプールのディフェンスは固い守りで、ペナルティーエリアに進入してきたボールはきっちりと跳ね返す。果たして最後までこの守りが通用するのだろうか。
34分にはミッドフィールドエリアで両チームの選手BaleとDegenが交錯。地面に倒れこむ。タッチライン際ではRedknappとBenitezの監督同士も溜まったフラストレーションを吐き出していた。結果、スパーズのBaleがイエローカードの警告を受けた。
前半は、リバプールが固いデフェンスで開始早々に挙げた先制点を守り切った。
<後半> 後半に入るや否やスパーズの勢いに火がついた。ハーフタイムにRedknapp監督から喝を入れられたのだろうか、ブレイクを狙って、前へ出る。
48分、リバプールKyrgiakosからのバックパスをGK Reinaが上手く処理しきれず、スパーズFW Defoeがボールを奪い取って無人のゴールへ向けてシュート。あっさりゴールが決まったかに見えたが、オフサイドフラッグが挙がって取り消された。
アウェイサポーターからあがった歓声も無駄となった。
それからもスパーズは攻撃の手を緩めず、Crouch、Defoeの前線コンビをターゲットにボールを前へ前へと運ぶ。リバプールのディフェンス陣は揺さぶられながらも、ゴーリーReinaの堅い守りでゴールは免れる。
60分台にスパーズは2人のサブを投入。
Corlukaに代わってHutton、そしてKranjcarが降りてKeaneが入った。Robbie Keaneのお出ましにアンフィールドから暖かい拍手も聞こえてきた。
70分に入るとスパーズも焦りが見え始めた。
76分、スパーズHuttonのコーナーキック。ゴール前で待つCrouch目がけてボールを蹴るが、リバプールDF CarragherのプレッシャーにCrouchはバランスを崩し倒れる。すかさずCrouchはペナルティをアピールするが、審判は首を振って却下。
79〜80分には両チームで選手交代があった。
BenitezはAquilaniに代えてNgogを、Rieraに代えてRodriguezを送った。
RedknappはKingを下げてBassongを投入。
タイムアップは刻々と迫る。5分のロスタイムが発表されると、スタジアムに緊張感が増す。
そして最後の最後にクライマックスがやってきた。
スパーズのペナルティーエリアでNgogがBassongのチャレンジを受けて倒れ、ホイッスルが鳴る。ペナルティー! 誰が見ても明らかなファールだった。
ペナルティーボックスに立つのは今日絶好調のKuyt。アンフィールドに新たな緊張感が漂う中、Kuytは左ネット目掛けて強烈なキックを放つ。ボールは見事ネットに収まった…が、レフリーの笛が鳴り、やり直しのゼスチャー。Kuytがボールを蹴る前に他の選手達がラインから飛び出したという判定らしい。
しかし2度目のペナルティーでもKuytは落ち着いていた。今度は右コーナーへの鋭いシュートが美しく決まった。2−0。
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【 Ending:試合終了 】 ロスタイムの追加点で勝敗の帰趨は決した。
スパーズはやはりミッドフィールドでのクリエイティビティーに乏しかったように思う。Crouch、Defoeに送るボールは殆どがロングパスだった。ボールのコントロールも今日は上手く行かず、いつものスパーズの勢いが見られなかった。
逆にリバプールは、ディフェンス陣の貢献と巧みな試合コントロールによってスパーズを封じ込めた。Gerrard、Torres抜きで見事なパフォーマンスだったと思う。
【 監督インタビュー 】 Liverpool:Rafa Benitez監督
『素晴らしいアンフィールドのファンのサポートでこの様なパフォーマンスができたこと、勝利を得られたことはとても嬉しい。完全に我々がゲームをコントロールし、決定的チャンスも4、5回は作った。トップ4争いはまだまだ険しくはあるが、これからもこのプレイを忘れずに勝ち進みたい』
Tottenham Hotspur:Harry Redknapp監督
『リバプールの素晴らしい動きに、我々としてはとてもやりにくいゲームだった。怪我人が多くチームのシフトも難しかったとはいえ、いい所が出せないまま試合が終わった。これから大きな試合を控えているので、今回から学び、次のゲームに備えたい』
【 マッチ・データ 】
Premiership 09-10
Liverpool VS Tottenham Hotspur
Anfield Stadium
20 January, 2010 20:00 Kick Off
Attendance: 42,016
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リバプール |
スパーズ |
スコア |
2(Kuyt 06,90Pen) |
0 |
ターゲットショット |
6 |
4 |
コーナーキック |
2 |
3 |
ファール |
11 |
17 |
オフサイド |
2 |
4 |
イエローカード |
2 |
3 |
レッドカード |
0 |
0 |
ポゼッション |
53.8% |
46.2% |
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Liverpool
Reina, Kyrgiakos, Insua, Carragher, Degen(Darby 90), Skrtel,
Aquilani(Ngog 79), Riera(Maxi 81), Mascherano, Lucas, Kuyt.
Subs Not Used: Cavalieri, Spearing, Babel, Pacheco.
Goals: Kuyt 06, 90(Pen).
Booked: Macherano, Leiva. |
Tottenham
Gomes, Bale, Dawson, Corluka(Hutton 61), King(Bassong 81),
Jenas, Palacios, Modric, Kranjcar(Keane 65), Crouch, Defoe.
Subs Not Used: Alnwick, Rose, Pavlyuchenko, Giovani.
Booked: Bale, Jenas, Palacios. |
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from NLW No.403 - January 26 2010 |
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