ハレルヤ洋子。東京在住。旅人兼歌い手。通称「流しのハレルヤ」。

2005年2月、ついにあこがれの聖地・リヴァプールへ、巡礼流し旅に出発!


「僕のリヴァ日記」 / ハレルヤ洋子
第7話 〜 IN MY LIFE 〜

路上でのパフォーマンスを終えた私が、ギターのストラップをはずそうとしていると、テリーさんが言いました。

「ヨーコ、ここだけじゃないよ。実はね、キャバーンパブ、そしてキャバーンクラブにもOKをもらってあるんだ」

キャバーンクラブ、そう、あの、ビートルズが272回出演した、伝説のキャバーンクラブです。

「キャバーンクラブ…? キャバーンクラブ!? 本当に?」
「ああ、本当だ!!」
「本当に、本当に、本当に?? 夢みたい!!」
「本当だよ、はっはっは!!!」

テリーさんは、まるでギターを抱えたロックンロールキッズみたいな私を、まずキャバーンパブへ連れて行きました。
アットホームな店内、小さなステージに所狭しと飾られたビートルズの楽器の数々…。一年前に訪れたこの店のステージで、私は「 HELLO GOODBYE 」を歌いました。

「ハロー、ハロー!!」

この店のお客さんに、一番伝えたかった言葉…。今思えば、最後のあの歌詞の部分、ちょっとしつこいくらいリピートしたかも。

目の前でスタウトを飲みながら声援を送ってくれるおじさん達にのせられ、何曲か歌っていると、スーツ姿のスマートな若いお兄さんがちらりとステージを見て、テリーさんの隣へと行きました。そして、曲が終わった私にテリーさんが目配せをしました。

「ヨーコ、Liverpool ECHO の人だよ。君にインタビューしたいそうだ」

私は、リヴァプールが大好きでこの街で歌うのが夢だった事、いろんな人に協力してもらい幸せだと言う事、そして今日の日がとても大切な日である事をインタビュアーに伝えました。

「ヨーコはわざわざこの日を選んで一人で日本から来たのかい?」
「はい、バレンタインデーに絶対歌うって決めてました!!」

「ヨーコ、君の亡くなったおばあさんもビートルズが好きだったのかい??」
「もちろん!! 今も自分が歌いたい、って思いながら私を見守っていると思う。笑」

所々、テリーさんに会話を助けてもらいながら話しをしていると、キャバーンのオーナー、デイブ・ジョーンズさんが現れました。
このおじさん、とても気さくな人で、私はそんな凄い人だとも知らずかなりふざけた会話ばかりしていました。一緒にインタビュー受けるなんてやっぱりこちらの人はノリがいいなあ、なんて、後で聞いてびっくり! この方こそ、キャバーンでの演奏を許可してくださったボスだったなんて!!

「ヨーコ、残りのリヴァプールライフも楽しんで!!」

デイブさんは、握手をしながら何度も何度もウインクをしました。デイブさん、本当にありがとうございます!!

エコーのカメラマンにインタビュアー、そしてテリーさんと私はいよいよ向かいます、伝説のあのクラブへ…。
いざ出陣、キャバーンクラブ!!
すっかりリラックスして演奏していた私ですが、さすがにこのステージに立った時は緊張しました。
チューニングの最中、震える指を寒さのせいにしたりして。

「ヒュー!!ヨーコ!!」

カメラマンの威勢のいい声が聞こえました。

(ありがとう!! やったるでー!!)

私はカメラマンに負けないくらい勢いよく演奏を始めました。そして、シャウト、シャウト、シャウト!!!
キャバーンクラブでお酒を楽しむ人、観光に立ち寄った人…。店内に居る人たちがステージの方へと近寄って来ました。そして、あたたかい声援や、時に威勢のいい掛け声を皆さんが送ってくれました。
ギターを抱えたアジア系の女の子が歌っている、ってきっと凄く珍しい光景だったでしょうね。

私はステージに立ってパフォーマンスをしながら思いました。
一年前この街に来た時、いえ、七年前にリヴァプールに初めて興味をもったあの時、こんな状況を誰が予想出来たでしょうか。
あの時、心に深く刻まれた「リヴァプール」という場所…。
そうだな、いつかは訪れていたことだろう。もしかしたら、留学、なんてしたかもしれないし、ワーキングホリデーの願書を出していたかもしれない。でも、キャバーンクラブでの演奏なんて、はなっから「夢」、「ありえない」で終わっていたと思います。実際今回も、路上での演奏さえ危ういところで、友達に

「キャバーンクラブで歌ってくるよ!! 笑」

なんて冗談を言って、皆にふざけるなよ、って笑われたっけ…。

だから人生っておもしろい。すべてのタイミングが偶然そろって、突然奇跡が起こったりする。
初めから自信満々に「目指せ、キャバーン!!」って気持ちでリヴァプールを訪れていたら、無理だよ、ってお払い箱だったかもしれません。
やっぱり、一年前に生活にへこたれて「逃げた」弱虫の私がいたからで、そんな弱虫だからこそ自分を変えたくて新しいドアをノックしてみたくなる…自分が生きている意味を知りたくなって、違う人生を探したくなる。

でも、きっと違う人生なんてないんだよね。私はどんなに惨めな過去も、悔しいくらいむかつく人も、今の自分を創ってくれた出来事だとしたらやっぱり絶対に捨てたくない。
そして、それ以上に愛する人たちや、愛する場所がある。きっとこの先もそんな出逢いを繰り返して生きて行くんだろう。

残り少ないキャバーンクラブでのパフォーマンスタイム。
最後にリヴァに伝えたいのはこれだけ。

In my life, I love you more...

(つづく)

from NLW No.197 - April 12, 2005

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