ハレルヤ洋子。東京在住。旅人兼歌い手。通称「流しのハレルヤ」。

2005年2月、ついにあこがれの聖地・リヴァプールへ、巡礼流し旅に出発!


「僕のリヴァ日記」 / ハレルヤ洋子
第9話(最終話)
  〜 STRAWBERRY FIELDS FOREVER 〜

リヴァプールライムストリートステイション、09:15AM 発。
リヴァとお別れの時間です。
ドラマみたいに抱き合ってお別れをする恋人達がいて、なんだかとても素敵な、今回最後に見たリヴァの景色でした。

ヴァージントレインのシートに座って目を閉じ、リヴァプールの街の風景や、アルバートドックを歩きながら聞こえる波の音を思い出しながら、ふと思いました。
私は、エメラルドグリーンの海と、コバルトブルーの空、焼き付くようなオレンジ色の太陽が大好きです。なのに何故この街に惹かれ、胸が締め付けられるほどに切なくなって、涙を流すのだろう、と。

そうか、リヴァプールは人生に似ている。
いや、人それぞれに人生があるから、ここでは「私の」と付け加えておこう。

リヴァプールの空はいつも泣いている、でも気付かないほどに、ひっそりと。だけど突然灰色だった空が真っ青に晴れ渡る。暖かくなったな、なんてコートを脱ぐと、突然強い風が吹いたりもする。海の向こうに想いを寄せながら、波打ち際に立つその海は、街を発展させるために皆が働いて流れていったものや人に汚され、濁っている。

世界の各地にある常夏の島が「パラダイス」と呼ばれるのは、きっと、非日常的な世界がそこに広がっているからだろう。だけど、リヴァプールは灰色の空だろうと人々を魅了してしまう、素晴らしい風景や人や時間が存在する。
そして、「パラダイス」な日々を送ることなく生きてきた私は、訪れる度に切ない感情が込み上げてくるんだ、リヴァの空を見上げると…。

だけどリヴァプールの人たちを見てみなよ、皆あんなに楽しそうにいつも笑っているじゃないか!
街中にあの笑顔が溢れているんだもの、それぞれが太陽のように輝いた笑顔。たとえ太陽が雲間からのぞくことがなくとも、充分にあたたかな気持ちでいられる。

世の中には二種類の人間が居ます。
太陽のように明るく光を放ち、いつも中心に居て、皆を引っ張っていったり、道を照らしてあげる事のできる強い人。
そして、一人じゃ光を放てなくて、そんな太陽が居るからこそ、暗闇でうっすらと輝ける月のような人。

私は後者だな。
でもいつか、なれるかな、太陽のような人に…。
そして、陽に当たったぽかぽかの布団に包まれて、人々が幸せな夢を見るような…そんな曲が作れるようになれるかな…。
今、私がひとりでも出来ることと言ったら、「Hello, Goodbye」が言えることくらいだけど。

ロンドンのユーストンステイションに着いた私は、地下鉄「ヴィクトリアライン」に乗り、途中「ピカデリーライン」へと乗り換えようと、アンダーグラウンドの通路を歩いていました。
ロンドンでよく見かける通路脇のパフォーマンスブース。そこではサックスを手にしたおじさんが演奏を始めようとしていました。その横を通り過ぎた時に流れ始めた曲、思わず潤んだ瞳。少し振り返りたくなりましたが、私はそのまま前へと進みました。
その曲は「YESTERDAY」でした。

帰りのヴァージンアトランテックの中で「U2」を爆音で聞き、沢山の思い出と愛と、ギターを背負って日本に到着。その日はイギリス天気、とでもいいましょうか、薄暗い空に雨がしとしとと降っていました。
東京の私の部屋の扉を開けると、一番最初に私の帰りを迎えてくれたのは、枯れることなく咲き続けていた赤いチューリップの花と、その隣に飾ってある写真でした。
七年前、ギタリストの羽賀君に無理を言って貰った、一枚の「ストロベリーフィールズ」の写真。
そう、ここから、すべてがはじまったのでした。

写真の裏には、今も消える事なくこう書かれています。
『僕のリヴァ』

(おわり)


私の周りに居る愛する人達、天国のおじいちゃんおばあちゃん、
リヴァプールの皆様、そして、Kazさん!! 本当にありがとう!!
いつか一緒に行こう、あのストロベリーフィールズに。
ストロベリーフィールズよ、永遠に…。

  P.S. I LOVE YOU!!
                            YOKO HALLELUJAH

from NLW No.200 - May 3, 2005

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