第4話 <憧れのマージーサイドへ>
そんなこんなで、初日につまづきはあったものの、ロンドンでの日々は比較的静穏(?)に過ぎ、いよいよリバプールに発つ朝になりました。
空はどんより曇っています。今回の旅は、寒いながらも好天に恵まれていたのですが、いよいよ傘の出番もあるかと覚悟をしました。
ホテルの前の通りでバスに乗り込み、ユーストン駅へ移動します。朝の道路はやや渋滞気味で、時間のないときはちょっとハラハラものです。
駅に着いてすぐ、窓口でブリットレイル・パスの発効手続きを済ませました。列車の到着が遅れているらしく、なかなか出発のプラットホームが表示されません。発車時刻が迫るなか、電光掲示板の前で表示が出るのを待つ人たち。こういうスケジュールのゆるさはイギリスならではでしょうか?
やっと表示が出て、プラットホームへゾロゾロと移動。初めて乗る Virgin Train は、赤の内装がキュートながら、ずいぶんコンパクトなつくりで、イギリス人の方々には少々狭いだろうと思いました。荷物の収納場所も狭いので、利用される方は、早めに乗って場所を確保することをお勧めします。週末のためかツーリストも多く、席はほぼ満杯。予約しておいて正解でした。
発車ベルもなく、列車はゆっくりと動き出します。リバプールまで2時間45分。憧れの地までもう少しです。列車が市街地を抜けて、なだらかな緑の丘が見えてくるにつれて、雲の間から陽射しが見え始めました。
隣の席ではビジネスマン風の男性が新聞を繰っています。こちらは少々緊張しながら、ガイドブックでリバプール情報の下調べです。Kazさんが送ってくれたガイドブックの地図をみて、回るルートを考えていると、ビジネスマンが『リバプールに行くの?』と話しかけてきました。内心冷や汗をかきつつ、知っている単語を総動員して必死に答えます。
わかりやすい英語を話す彼は、リバプール出身のDaveさん。平日はロンドンの銀行に勤務し、週末はリバプールに帰る単身赴任生活をしているそうです。二重生活は大変だけど、収入を考えるとロンドンで働くほうが好条件とか。でも、住むにはリバプールが快適なんだそうです。
(平日のロンドンでの滞在費がバカにならないそうで。ロンドンのホテル代高かったでしょう〜と言われました)
リバプール市内や近郊の見どころ、お勧めの美術館、ギャラリーなどを教えてもらい、いろいろと話すうちに、どうやら彼の住まいは私の今回の滞在先ブランデルサンズに近く、なんと、ゲストハウスのマダムともお知り合いだということが分かりました。世間は狭いというか、ひょんなところに出会いがあるもんですね。
ちなみに彼はリバプールのファンで、『決して』エバートンではないといっていました。なぜ『決して』なのか突っ込んでみたかったけど、そこまでの表現力は私にはなかった…。
そうこうするうち、雲が切れて、晴れ間がひろがってきました。いつもこんなにお天気がいいわけじゃないそうです。どうやら私は、かなりラッキーだったのかも知れない。
窓の外の風景は、田園地帯から地方の工業都市といった趣に変わりつつあります。マージー河も見えてきました。ロンドン近郊とは違い、なんと言うか、若干さびれた雰囲気は否めません。レンガ造りのこぢんまりした家々が続きます。キャプテンのスティーヴィーGはスラム街で育ったと伝えられていますが、どのあたりの、どんな風景の場所なのでしょう…。
列車は遅れもなく、リバプール・ライムストリート駅に到着しました。別れ際、Daveさんがよい旅を! と声をかけてくれました。おかげさまで、私にとっても楽しく有意義なひとときでした。彼の英語はすごく聞き取りやすくて、とても勉強になりました。何より、言葉や文化を異にする人と少しでもつながりが持てるというのは、気持ちをゆたかにしてくれるものですね。
(つづく)
― 追記 ―
この原稿を書き終えた後、ロンドンの爆破テロのニュースが飛び込んできました。犠牲者の方のご冥福をお祈りいたします。
また、ロンドンに単身赴任していたDaveさんのご無事を心から願っています。 (earlybird)
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