第5話 <マジカル・ミステリー・ツアー>
遠路はるばるだったけど、ようやくリバプールにたどりつきました。
駅を出ると、空は晴れわたり、空気は心地よく乾いていて、街を散策するにはもってこいの陽気です。
いま目の前にあるこの街の、この通りを、もしかしたらレッズの誰かが車で走り抜けているかも知れない。
(みんなと同じ空気を吸っているんだ!)
そう思うだけで、ウキウキしてくるじゃありませんか。
とりあえず、クイーン・スクウェアにあるツーリスト・インフォメーションを目指すことにしました。右手にセント・ジョージ・ホールらしき建物、正面にはショッピングモールのような建物が見えます。通りが斜めに走っているせいか、位置関係がよくつかめません。仕方ないので、見当をつけて歩き出しました。
標識を見ながら進むと、広場のような場所の一角に、リバプールFCのショップを発見! ここを素通りできるはずがない。ちょっとのぞいてみると、スカーフからTシャツ、ランチボックス、マグカップまで、レッズカラー一色! チャンピオンズリーグの記念グッズもある。ここに足を踏み入れたら1時間はつぶれてしまいそう。先を急ごう。
インフォメーションはショップの先にありました。まずはここで、ビートルズゆかりの場所を回る『マジカル・ミステリー・ツアー』の予約を取ってもらいました。集合までの待ち時間にショップに戻り、スカーフを仕入れました。モリエンテスが入団会見のときに掲げていたスタンダードなロゴのやつ。これが欲しかったんですよね♪
ビートルズは、今回のリバプール訪問のもう一つの目的でした。
最近でこそゆっくり聴くヒマもなく、遠ざかっていたのですが、私の中学、高校時代はビートルズを中心に回っていたようなものでした。
彼らとの出会いがなければ、ずいぶん違った人生になっていたような気がします。そんなわけで、彼らのゆかりの地を訪ねることも楽しみにしていたのです。
意気揚々とツアーのバスに乗り込んだまではよかったのですが、ガイドさんの喋りを聞いて、やばい! と思いました。英語がサッパリ分からないんです。私の語彙の狭さと、彼の独特の訛りのために、最初の1、2センテンスくらいしかついていけないんですね。
Dave さんとの車中のお喋りで、ちょっぴり自信を回復していただけにショックでした。
おそらく、ポールのホームカミングツアーのライブの様子とか、ポール本人に会ったときのエピソードなどを、色々ジョークを交えて話していたようなんですが、2割も理解できていなかったと思います。他のお客さんが、冗談に反応して笑っているのに、ついていけないのがまた寂しい(これならスカウスハウスで日本語ガイドのツアーを頼んでおけばよかった…)。
なかには非常にマニアックなファンもいて、ガイドさんが繰り出す『○年○月○日のライブで演奏された曲は?』みたいなカルトな質問にもばっちり答えていました。世の中にはビートルズに命を賭けてるヒトもいるんですね。私は、忙しさを口実に遠ざかっていたかも…と反省しました。
でも、メンバーの生家(思いのほかこぢんまりした住まいだった)や、ポールがブレイクした後も住んでいたという家、ミミおばさんの家、保存できるかどうかの瀬戸際というストロベリー・フィールズ、キャバーン・クラブやグレープスなど、彼らが辿った足跡を回ることができて、大満足でした。
ジョージの生家を見たとき、一瞬、言い知れない寂しさがよぎったのですが、その時以外は冷静に眺めていられるのが、自分でも不思議でした。
そして、バスで色々なエリアを周るうちに、この街が思いのほか公園や緑に恵まれていて、静かで住みやすそうな街という印象も受けたのでした。
(つづく)
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