第6話 <ブランデルサンズのステキなゲストハウス>
キャバーン・クラブの前でツアーは解散、ひとしきり記念撮影をしたところで時計をみると5時。
アメックスのオフィスを探し、トラベラーズチェックの換金をしているうちに、ショッピング街は店じまいを始めていました。
まだ夕暮れという感じでもないのに、ロンドンと違って街を出歩くヒトは少ないような気がします。東京の夜を見慣れていると、閑散とした感じです。金曜日の夜というのにこの違いは…。
初めての街で、人通りも少なく、開いているお店もなかなか目につかないとなると、さすがに心細くなってきました。
やっと開いているカフェを見つけたので、入ってみました。
『本日お勧めのチキンパイ!』なんて看板にうたっているわりには、『もうない』って、にべもないお返事。変わりにビーフパイなるものを注文したら、レンジでチンしただけの妙にしょっぱいものが出てきました。どうりでお客が入っていないわけだ…。
気を取り直して、ゲストハウスに向かうことにしました。
Lime Street 駅から Mersey Rail に乗り、Moorfields で Southport 行きに乗り換えて、Blundellsands
& Crosby へ。
港町らしい眺めの向こうに、夕陽が沈んでゆきます。明日はいよいよ念願の Anfield 初訪問。どんな1日が待っているやら。
やがて電車は Blundellsands の駅に着きました。これがまた、降りる人もまばらな、非常に静かでこぢんまりした駅です。駅の前にはお店の1軒もなく、メインストリートも人っ子ひとり、車一台通らない静けさ。聞こえてくるのは小鳥のさえずりだけ。道の両側には、ひろーいお庭つきの一軒家が並んでいます。
Dave さんがすごくいい所と強調してたけど、なるほど、ここはリバプールの成城か、芦屋かも…と思ううちに、ゲストハウスが見えてきました。
手入れの行き届いたお庭に、大きな出窓がいくつもある2階建ての一軒家でした!
(日本じゃ一生かかっても手に入らないよなあ…)
ベルを押すと、ミセス・マーシャルが満面の笑みで出迎えてくれました。
再びドキドキしながらご挨拶。
年のころ50代なかばでしょうか、ブロンドにハスキーボイス、気さくでさっぱりした感じのマダムです。中にはいると、白い壁に赤を基調にしたファブリックやカーペットといい、アンティーク風の家具や置物といい、バランスのとれたセンスが感じられます。
案内された中2階のシングルルームは、コンパクトながらも居心地のいい空間で、大きな3面の白いドレッサーにはティーセット、ミネラルウオーターが用意され、寝心地のよさそうなセミダブルのベッド、寝転んで見られる位置にケーブルテレビが備え付け。共有のバスルームは、かなりゆったりした作りで、バスタブは大理石? さりげなく鉢植えなどが飾られています。
どこもかしこも、インテリア雑誌から抜け出てきたよう。ビジネスライクなロンドンのホテルより、よっぽど快適に過ごせそうです。やっぱりここを選んで大正解でした。
荷物をほどくのももどかしく、ベッドにゴロンと横になると、長旅の疲れも手伝ってそのまま寝入ってしまいました。
(つづく)
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